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また、始めてしまった…
俺、山口 龍輝はすべてにおいて、平凡な男性である。いや、平凡であるように見せている、と言った方が正しかっただろう。
俺はすべてにおいて他者を圧倒できる才能を持っている。一度見たことは、意図的に忘れようとしない限り忘れることはなく、計算速度も速い。電化製品から家まで大抵のものは自作することができる。実際、俺の部屋の中にはオリジナルの冷蔵庫や加熱器など、貰ってきた廃材から自作したものが沢山置いてある。
小さい頃から、やろうと思えばなんでもできた。家の近くの処分場から貰ってきたものを使って、某ロボットの道具だって色々作りもした。
「暇だ…」
休日である今日は、家でやらなければならないような仕事も特になく、好きなオンラインゲームはメンテが重なり、家事もすべて終わってしまい、やることがなかった。
かといって、外に出かけようという気にもならず、部屋でゴロゴロとだらけているのであった。
「この辺りでイベントでもないかな」
パソコンとスマホを起動させ、近くのショッピングセンターやゲームのイベントがないかと探してみるが、どれも近いとは言い難い場所でしかやっていなかった。
もっとも、車を30分も走らせればつく距離ではあったのだが…
そしてまた、ゴロゴロと床を転がっているのだった。
外は晴れており、窓の近くにいると心地いい日の光が差し込んでくる。
「散歩でもするか」
ふと、そう思った。
長時間ゴロゴロと床に寝そべっていたためだろうか、体を起こすと、関節がコキコキと音を立てた。
「あ~、最近はほとんど運動なんてしないからな、運動不足だな」
本当にそうだ。動くことといえば家と駅、駅から会社までの間位だろう。乗り換えも特にないため、運動と呼べるものは一切やっていなかった。
俺は身支度を終え、適当な小説を鞄に放り込むと
「行ってきます」
近くの公園へ散歩に出かけた。
公園は住んでいるアパートから800mほど離れた場所にあり、公園のすぐ近くには大きな道路が通っている。
一応横断歩道はあるが、一時停止ではないので車はかなりの速度で走っている。
それなりに車の交通量が多く、公園の近くということもあり走っていこうとする子供も多い。
そのため、危険な道路だと有名だった。
俺がその道路の近くへと歩いてくると、公園から出てくる一組の親子を見つけた。
父親と男の子の2人で手に持っているものから考えると、キャッチボールをしていたようだ。
その親子を微笑ましく思っていると、ふとした拍子に男の子がグローブの中にあったボールを落としてしまった。
父親を見ると、直前に電話がかかってきたのかスマホを耳に当て始めたところで、男の子から目を離していた。
地面へと落ちたボールは速度を落とさず、男の子を引き連れて道路へと向かっていく。
視界の隅に2、3台の車が
「くそっ! 最悪だ!!」
俺は即座に走り出した。
車の速度を見ると、全力で走っても男の子を助け俺自身も道路を抜けるのは、かなりギリギリだとわかった。
息を荒げながら走っていくと、車の運転席が見えるようになった。
そこの運転手は何が珍しいのか、わき見運転をしていた。
「マジ、かよ!!」
息も絶え絶えに、今にも倒れそうなほどの全力を出し男の子へと走る。
だが、日ごろの運動不足が原因か、思っていたような速度を出すことが出来ない。
「こんな、とき、くらい、なんとか、しろ!」
自分の体に鞭を打ちながら、男の子の方へと走る。
これでは男の子を抱えることは出来ても、そこからの移動が出来そうもなかった。
運転手がようやく男の子と俺に気が付き、急ブレーキをかけ始める。
だが、もう間に合わないような場所まで来ていた。
俺は予定を変更し、
「間に合え!!」
男の子を道路から父親の方へと押した。
走っていたことが幸いし、少しの力で男の子は父親のところまで戻り、車に撥ねられる心配はなくなった。
だが、俺自身はやはりというべきか、間に合わなかった。
ドンッ!!
全身に強い痛みを覚えつつ、道路を転がった。
あぁ、これはかなりの骨が折れたな・・・
自分の痛みや感覚から、大量の血を流していることも分かった。
周りが何か言っていたが、すでに意識が遠のきよくわからなかった。
死ぬのか・・・
俺はそう感じた。
こんにちはyoshikeiです。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。
次々回からメインの話となります。
次回は本日の18時に投稿します。
今後ともよろしくお願いします。