表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/19

難関のコース

鋭角(えいかく)というコースがある。

これは、普通二種、大型二種免許を取得する者にとっては、鬼門と呼ぶにふさわしい教習所内の難関コースである。


暫く教習所内のコースを走っていると、春川教官が口を開いた。


「今田さん、運転を変わりましょう」


「はい…」


私は返事をして教習車を停めた。

春川教官は颯爽と助手席を降り運転席に乗り込む。


「これから、鋭角というコースに入ります」


「えいかく…」


これから何が始まるのか…私は、春川教官の運転を、その一挙手一投足を、固唾を呑んで見守った。


ゴクリ…


唾を飲み込む音が春川教官に聞こえたのか、その薄い唇が開いた。


「今田さん、鋭角は卒検にっ含まれっます」


もう、福島弁も気にならない。


「では、鋭角に入ります」



鋭角コースとは、簡単に言えばV字をした狭い道である。

道幅は車体より少し広く、普通免許を教習した人は分かると思うが、S字やクランクが、Vの字になったコースと言えばわかり易い。V字になった狭いコースを、3回までの切り返しで、無事教習車をコースから出さなければならない。


私を乗せた教習車が鋭角に入る。


「いいですか今田さん、まず右側から入るコースは車体を沿線に沿って進ませ、この位置でまず止ります」


「はいっ」


「この位置ですよ。その次にハンドルをめいっぱい左に切り、そのままゆっくり前に進むのです。いいですか?」


「はい…」


「あまり前に出すぎると脱輪します。はいっ!この位置です。この位置で止めて、ギアをバックに入れて安全確認っ!」


「はぁ…」


「車体をバックさせる時も、後輪に要注意っ。はい、この位置で止め、ハンドルをめいっぱい切り、前に出ます」


「おおっ!」


春川教官の眼鏡がキラリと光る。


「2回です。やりようによっては、2回で鋭角を出ることが出来るのです。やってごらんなさい」


「はい…」


私は自信なく返事をし、助手席を降り運転席に座った。


鋭角コースを何回か練習し、かろうじて3回の切り返しで車体を出すことが出来たが、2時間の技能教習終了後、


(あんな鋭角のような道が日本にあるのかなぁ…)


と、不思議に思った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ