兄弟の話し
平成27年10月10日、株式会社スター交通の面接を受けるため、千葉市若葉区みつわ台所在の本社を訪れた。
平成25年の春、私は2回目の服役を終え、すぐに教習所に通い普通車免許証を取得した。
教習所に通うのは普通自動二輪を含め、実に4回目だった。
3度目の普通車免許証を取得するために教習所を訪れた時は、流石に教官も驚きの表情を隠せなかった。
「なんでこんなに免許を無くすんだね」
「1回取り消しになるのは解るが、3回も4回も、教習所に通う人は、余り見たことないな…」
と、毎回、実技になるとあらゆる教官から言われていた。
「やはり、運転はうまいな…教習所に何回も通っているだけのことはある」
あるベテラン教官はそう呟いた。
私はこと運転に関しては自信があった。
親分や兄ィの運転手だった時は、
『常に安全運転を心がけ、スピードを出す時はスピードを出して時間通りに目的地に辿り着くメリハリのある運転』
を徹底的に叩き込まれ、それを実行していた。
しかし、一発試験で幕張に行く自信はなかった。
何回も落とされて毎回試験場に行くなら、教習所に通った方が確実だったからだ。
3回目の普通車免許証を取得して直ぐだった。
堅気になった兄弟と食事にでかけ近況を報告しあった。
「ところで兄弟、いま、何してんだ?」
「タクシーさ。兄弟もうちに来いよ」
「はっ?タクシー…」
「なんでタクシーなんか乗ってんの?タクシーじゃ食えんでしょ」
「いや、やり方によっては稼げんだよ」
「俺は風俗やキャバ嬢を何人も固定客に持っている。軽く40万位は行くな」
「40万…タクシーでか?」
「まあな、美味しい思いも結構してるぜ」
「ホントかよ信じらんねえな…」
「3年経ったらうちに来いよ。一緒にやろうぜ」
私は、タクシー乗務員には興味がなかったので、
「タクシーなんかやんねえよ。客になんか言われたら、ぶっ飛ばしかねねぇ。それに、取り消しばっかなっている俺をタクシー会社が雇う訳ねえよ」
その後、私は千葉大宮高校に入学する事になるが、二種免許を取得するなど全く考えていなかった。