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塩田検定官

卒業検定当日を迎えた。

10月25日のこの日の白河市は澄んだ空気に満ちており、降り注ぐ陽射しは晩秋を迎えようとしている東北地方とは思えぬほど暖かかった。


受験生は計4人。

大型自動車1名に、大型自動車2種1名。大型自動車とけん引が1名。それに普通自動車2種の私である。


その受験生たちの顔を見ていると、短い期間ではあったが、


『共に苦労し同じ釜の飯を食った仲間』


という意識が自然と芽生えてくる。


この教習所に入る前は、全く違う人生を歩んできた面々。

何の接点もなく、ここを卒業したらおそらくはもう2度と会うことはないだろう。

しかし、この教習所に入学することにより、共に卒業に向かい日々奮闘した経験は、生涯の思い出となるとともに、また財産になるであろう。そこにはまさに、


『一期一会』


という言葉が当てはまるのではないか。


私にはそう思えてならない。



検定日当日は、これ程にない緊張感に見舞われた。

不合格であれば、更に1時間の技能教習を受けなければ再試験を受けることは出来ない。


(これだけは絶対に落とせない)


その気持ちが、尚更、緊張感に拍車をかけ吐き気を催す程だった。


ふた組に分かれた受験生は、先に受験する教習車に同乗する。


私の組の検定官は塩田教官。


私はこの塩田教官に、教習が始まる前に他の教習生と話に夢中になり、3回ほど


「今田さん、教習が始まりますよ」


と、喫煙所まで迎えにこられたことがあった。


流石に3回目ともなると、


「今田さん」


と名前を呼ぶ声が若干怒りに満ち、眼鏡の奥の細い眼差しは開いているのか開いていないのか解らないほど鋭く感じた。


その塩田教官が検定官であることが更なる緊張感に繋がった。



午前10時、卒業検定が始まった。


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