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失望

 小さい頃から、テストで100点を取るのが当たり前だった。5教科の通信簿はいつも5段階中5で、それは僕にとって普通のことだった。早苗は、いつもその横で「いいなー」と声を漏らし、自信のあるテストでは僕と点を競おうとしてきたのであった。

 中学に入った頃から、周りの生徒も勉強が難しくなったと嘆いていて、テストで早苗の方が良い点数を取ることもでてきた。けれど、僕は今まで特に頑張ることもしなかった。そして、問題はそれでそこそこ良い点数を取り続けることができてしまったのだ。周りは、そんな僕を猛烈に努力してる奴だと見なし、30分しかテスト勉強してないと言っても誰も信じなかった。あの早苗も。


 うんざりしていた。僕は僕自身の能力を持て余していたのだ。そして、できる奴だった僕はついにできない奴へと徐々に転落の道を歩みつつある。受験期になりそれが明白になってきていた。もう、嫌だった。頑張れない自分も、なのに何も知らずに評価してくる先生も、友達も、そして僕に勝とうとしてくる早苗も。


 冬に差し掛かったある日、ついに本格的な進路希望調査用紙が配られた。親と相談して最終希望を出せとのことだ。僕は、僕自身を知らない親と大きな口喧嘩を開催することとなった。親の行かせたい高校と僕が行きたい高校が食い違っていたのだ。大口論の末、結局最後には僕の希望が通った。

 偏差値の高い笹神高校へは、行かないことにした。僕はもう大変な勉強をしなければ授業についていけないような高校には行きたくないし、行ったところでやっていけなくなるだろう。みんな僕を勝手に出来る奴だとみなし、いづれ成績の急落した僕に勝手に失望する。僕はその失望が怖かった。だから、僕は自分からこの道を選ぶことで皆に先んじて自ら失望を手繰り寄せるのだ。


 ごめんね、早苗。


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