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僕と早苗

「ねえ、テストどうだった?」

 一時間目の国語が終わると、隣のクラスから幼馴染の前原まえばら早苗さなえが僕の机の元へ駆けこんできた。セーラー服の胸元には一枚の用紙を抱えている。何となく、早苗が僕の元に来るだろうことは予想できていた。

「人に聞く時は、自分からどうぞ」

 頬杖をつきながらかったるい気分で促すと、早苗は堂々と用紙を僕の目の前に突きつけてきた。

「じゃーん、理科は90点でしたー」

 早苗のクラスのテスト返しは理科だったらしい。平均点は60点。ま、公立中学のここならトップ層はそれくらいとるだろう。

 僕は片手で机の中を探り出し、たった今詰め込んだばかりの国語のテストを引っ張りだした。

「ほれ」

 早苗に渡すと、彼女は食い入るように見つめ出した。

「95点……流石……」

「もういいだろ」

 早苗の手から国語のテスト用紙を取り返すと、また机の中に適当に押し入れた。早苗は、僕の机に腰かけて大袈裟に嘆いた。

「あーあ、また負けた」

「科目違うじゃん」

「ううん、気分的によ」

 その時、始業の鐘が鳴り、早苗はすとんと机から降りて言った。

「昼休みに、また来るからね」

「へいへい」

 しっしとハエを追い払うようにあしらう。彼女が行ってしまうと自然ため息が出た。



 前原早苗は、僕の幼馴染だった。幼稚園の頃から僕は早苗と仲が良く、でなければ今も友達でいることはなかっただろう。早苗は勉強も運動も人一倍駄目なくせに負けん気だけは強く、小さい頃は色々と僕に勝負事を持ちかけては負けて泣いていた。僕は小さい頃から特に勉強だけは何故か良くできて、周りから「頭がいい」と言うような言葉をよく投げかけられた。しかし、僕にとって「頭がいい」とはいまいちピンと来ないセリフであった。僕は勉強が好きでもなければ特に努力をしているわけでもなかったからだ。

 中学になると、早苗の努力はついに実を結び始め、めきめきと成績が伸びていった。対照的に僕は、小学校時代よりも更に勉強しなくなった。問題は、それでも僕は良い成績を維持できてしまうことだった。 少なくとも今までは……


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