日本刀
多くの人で賑わっている街の一角に大きな店がある、店頭に並べられているのは武器や防具だが布製品や革製品はまったく無い。それは当たり前でここは鍛冶屋が出している直営店なのだから。
店の裏に作業場があり鞴で風を送る音や金属を叩く音が響いている。そんな中で声を高くして話をしている男が2人。1人は革製の防具を着込んだ冒険者で、もう1人は作業場を仕切っている親方だ。
「だから鉄をこうして何度も叩いて伸ばすんだよ、そうしてそれを二つに折ってまた熱した後に叩く。それを何度も繰り返すと不純物がなくなるからそうしたら硬さの違うこっちの材料をこうして付けて形を整えてくれればいいんだよ!」
冒険者の男はどうやら怒りながら声を荒げているようだ。
「だから何度も言っているだろうが。まずこの形じゃ使えん、魔物を切るにしても盗賊とやり合うにしても強度が足りんぞ。こんな形じゃ簡単に折れてしまう、悪い事は言わんから普通の両手剣にしておけ」
親方は周囲の音に負けないように大きな声を出してはいるが別に怒っているのではなくどちらかといえば諭すように話している。
「駄目だって! そんな形じゃ日本刀とは言えないんだ!」
「日本刀というのかこれは。しかし実戦向きじゃないぞ? たしかにお前が言っている作り方は鍛冶屋なら常識として知っておるし、その方法で作ったのがこの剣じゃ」
親方が出して見せたのは両手剣だがまだ持ち手には何も付いていない出来立てという感じの物だ。
「これは型打ちじゃなくお前の言った折り返し鍛錬した物だ。まぁ磨きとしては黒打ちじゃがな」
それは磨き仕上げを施しているのではなく敢えて刃の部分だけが磨かれていた。これは作り方の一つで全身を磨き仕上げした場合と比べると錆び難いという特徴がある。
「これなら強度もあるし実用的だろう。お前の言う日本刀? とかいう物はまず常識ある鍛冶士なら作らんぞ」
「もういい、他を探す!」
冒険者は捨て台詞を残して作業場を出て行った。
「やれやれ。ギルドからの紹介じゃから話を聞いてはみたが使えない様な物を作れとか言うし、変な奴じゃったな。何処に行こうがまともな鍛冶士なら作らんじゃろうにの」
小さく呟くと親方は弟子の作った武器を確認する作業に戻った。