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第5話 ~お家探索~

「アル…テナシア様ですか?」

目の前で起こった変化だけに間違いないとは思うのだが、その

常識では考えられない光景が信じられず問いかけてしまった。


「ええ。でも呼び方がちょっと堅いですね。気軽にアルと呼んで

 くれて良いのですよ?」

微笑を浮かべてそんな事を言われると、意味もなく照れてしまう。

「ええと…では、アル…様?」

「アル、です」


そう言って笑みを深める美女を見て、生まれて始めて笑顔に

対してちょっとした威圧感を感じてしまった。

「アル…さんで勘弁して下さい。流石に神様を呼び捨てにする

 のは恐れ多すぎます」

土下座せんばかりの勢いで頭を下げた。無宗教と言われる日本人

だが、八百万の考えを持っている。実際に神と呼ばれる存在に会い

目の前で人に非ざる力を見せつけられたというのに、自分と対等に

扱うという訳にはいかないだろう。


「…仕方ありませんね。それで我慢します」

下げた頭の上からそんな言葉がかけられ、ほっとして目を開けると

自分を見上げ、ズボンを引っ張る美幼女と目が合った。

「お兄ちゃん、私も!」


頭を上げて目の前のアルさんを見る。

次いで未だズボンを引っ張る足元の幼女を見る。

まるでアルさんをそのまま幼くしたような容姿。

もしも存在するなら、天使とはこんな姿をしているのかもしれない。

幼子特有のちょっと甲高い声。

自分をお兄ちゃんと言う存在。


頭の中に答えが浮かんできたが念の為に確認する。

「アルさん…この子は?」

「私の自慢の娘、ミリアリアです」

予想に違わぬ返事と共に、どことなく誇らしげに胸を張るアルさん。

大きな胸が強調されて男子高校生には目の毒です。

そんな毒に釘付けになっていた哲也を救ったのは天使だった。


「ねー、私も!名前!」

再度ズボンを引っ張られた事で視線を外す事に成功した。

「えーと、ミリアリア…様?」

戸惑いながらも名を呼んだのだが、天使は頬を膨らます。

「違うのっ!ミリーって呼んで!」


白いトカゲだと思っていたが、実はドラゴンで、更には神様の

娘と判明した現在、敬称無しで名を呼ぶのは不敬ではなかろうか?

そんな思いを拭いきれず、思わずアルさんに助けを求めるべく

目を上げたのだが、構わないとばかりに小さく頷かれた。

「分かった…。よろしく、ミリー」

「うんっ!」

覚悟を決めて告げた言葉に、ミリーは最高の笑顔で返してくれた。

腰の高さにある頭を撫でると、絹のような手触りに驚いた。


「それでは、哲也さんのお宅訪問といきましょうか」

「おー!」

アルさんの言葉に元気良く右手を挙げて応えると、真っ先に

駆け出していくミリー。

「はやくー!」

手にしていた頭髪の感触が去って行くのを少し残念に思いながら

振り返って手を振るミリーに和み、アルさんと目を合わせると

互いに苦笑しながら歩き出したのだった。


玄関を開けると上がり框があり、そこで靴を脱ぐように二人に伝える。

「靴を脱ぐなんて珍しいですね」

とアルさんに言われた。

折れ曲がりながら奥に続く廊下を歩き三人揃って順繰りに確認していく。


一番最初の右手には、キッチンがある。

冷蔵庫や電子レンジなどの家電製品も想像したとおりに有った。

冷蔵庫は冷えていたし、蛇口を捻るときちんと水が出た。

どういう原理か分からないが、魔法だからと納得する事にした。

続いて右手には洗面所・風呂・トイレと水回りが続く。

それぞれに設備を見る度に驚いたり興味津々だったりする二人に和む。


左手には居間・哲也の部屋・祖父の部屋・客間と続く。

箪笥や机などの家具の他、哲也が愛用していたパソコンすらも有った。

説明が難しかったので「便利な箱です」と苦しい言い訳をしながら

立ち上げて、インターネットまで普通に使えるのを確認した。

落ち着いたら◯chでスレでも立てるか。などと考える。


各部屋を通り抜けた側は庭に面したており、じいちゃん達が

良く将棋や碁を楽しんでいた濡れ縁がある。

垣根の上に見える空間が、空ではなく真っ白なのには違和感を感じるが…。


一通り確認し終わったので、居間に戻り二人には座布団に座って貰う。

一人キッチンに戻り冷蔵庫からオレンジジュースを取り出す。

これは近所の鮫田さん家で作られる自家製ジュースで美味いのだ。

グラスに人数分注ぎ、お盆に乗せて居間へと戻る。

「美味しいー!」

「あら、本当。美味しいわ」

鮫田さん家のオレンジジュースは二人にも好評だった。


「それで、私達はどこの部屋に住みましょう?」

一息ついたアルさんからの発言でまたもや混乱に陥る。

どこの部屋に?部屋ってこの家以外には周りに何にもなかったし

もしかしなくても、この家に住むつもりなんだろうか?

絶世の美女と天使のような美幼女が?この家に?

聞き間違いかと確認してみたが、聞き間違いでは無かった。


何故かと聞いてみたが

「娘が一緒に住みたがったし、面白そうだから。それに新しい世界の

 事を学ぶにしても私が居ないと無理でしょ?」

というアルさんの言葉で客間を提供する事になった。


こうして神様である時空竜親子と哲也の奇妙な同居がスタートした。

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