第伍話 既視・・・無視。
毎度蝸牛と申す者です。
よろしくお願いします。
・・・・・何か静かすぎる。昨日がうるさかっただけか。・・・それにしても・・・つまらない。つまらない。実につまらない。・・・!?ついに孤独よりも辞書の脅威のほうがマシだと錯覚を!?Mか!ドMになってしまったのか!?恐るべし析華・・・さん。
昨日一日で僕の奴隷根性を覚醒させるとは。あいつが心酔するのも・・・やはり頷けない。
ん、教室の外に析華が見えた。声をかけようか。どうしようか。なんか恋する乙女的な心情になっているのは別として、迷う。昨日一日の付き合いだから・・・どうしようか。でも・・昨日のお礼もかねて・・!?何のお礼だ!?僕は置いて行かれたんだぞ!?
ガラッ
僕は戸を開けて彼女の元に駆け寄り、
「析華さんこんにちは」
「・・・」彼女は、僕の方を振り向いてから、何か侮蔑するように、この世で最も汚い者でも見るように、形容しがたいほど純粋でどす黒く染まった視線をこちらに向けてから、走り去っていった。
無視!キツい!・・・諦めてなるものか・・・何か策は・・・!・・・有ったぜ!とっておきがな!
・・・まずこいつの悪いイメージを膨らませるんだ・・・ドS、外道、鬼、悪魔、最低、最凶、最恐、・・・最狂・・・
次の瞬間、僕の顔面に6冊の辞書が飛び込んできた。無慈悲な紙の塊は、僕の顔面を容赦なく潰してくる。
「・・・はっはぁ!・・・|ふぁふぁりやがっふぁな!《掛かりやがったな》」
「・・・・!無価値な奴隷でも策を巡らせれば何かしら出来るものなのね。恐れ入ったわ」
「・・・とりあえふ・・辞書・・・昨日の話でいくと4冊までだった・・・ですよね?」
「貴方のこともあればあの愚かなストーカー君のこともあるので、スペアは当然でしょ?」
「ますます感服するばかりだよ、本当に」
「その台詞を小馬鹿にしているんじゃなく本心で使うところが貴方らしいわね。それで、どうなの?昨日飽きて帰っちゃったけど、出来たの?」
「ああ、おかげさまでな。んで、お前はストーカーと帰ったのか?またお前もまんざらでもブベラぁ!」
「もう一冊持ってたんだった」
「その軽そうな体からそんな暗器が出てくるんだ・・・」
「と言うか、あの愚か者は縛って体育館倉庫に置いといたはずだけど」
「・・・・・・・・・・・行ってみよう、あいつの命がとりあえず心配だ」
〜10分ほど後
「・・・これはひどい」
「そうね、まるでここで誰かがもがき苦しんで暴れたようね」
「それを本気の比喩表現で使っているなら貴方の目は節穴としか言いようがない。そこに倒れてる哀れな男に見覚えは?」
「無いわ。初対面よ」
「こいつが意識を取り戻してもそれを言えるというのか」
「ええ、だって、私の忠実な部下だもの。使えるかどうかは別としてね」
「あぁぁ・・・うう・・・」
「起きたようだぞ。さあ、気持ちいい目覚めを体感させてやれ」
「焔君!起きて起きて!朝だよー!」
・・・・!声変わった!コレが噂の偽造ツンデレ!
「・・・!析華さん!さぁ新婚旅行の日て・・ぐほぁ!」
起床そうそう彼は覚めない眠りについたようだ。
「ところで、彼に実験台になってもらってないとしたら、どうやって能力発現を自覚したの?」
「いや、感覚的に」
『そこまで無能だとは思わなかった」
「・・・試してみますか?」
「おー出来てる出来てる。二時間やっててだめだった時すでに諦めたのに」
「そんな早くに!?」
「まぁそれはともかく、貴方能力名何にするの?強化、進化、みたいね。ここまで来て僧侶とか賢者的な立ち位置なんて・・・貴方ってつくづく可哀想ね」
「いままで僕が必死に目を背けていた現実の方向にに首を思いっきりねじり回された気分だ」
「あらそう、貴重な体験ね」
「そう済まされないような気もしなくもないけど。まあ名前になぞらえて発芽ってとこかな」
「まあいいんじゃない?強化だったら違う気もするけど」
「おはようございます!」
この状況で起きるか・・・空気が読めない
「あれ・・・俺いったい何してたんだ・・・?思い出せない・・・」
・・・・・おめでたい奴だ。こいつに程知らぬが仏が似合う人物もそういないだろう。僕はつくづくそう思うのだった。
ありがとうございました。