第拾肆話 undulation×combination
今回もよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
さて、二人が起きてから数分後
「あんな輩にやられるとは・・・不覚ね」
「不覚じゃないだろ。能力の精度、作戦において全てこちらが劣ってたのは事実だ」
「・・・認めたくないけど。俺も同感」
・・・重苦しい雰囲気が流れる。
「思ったんだけどさ・・・」
「「?」」
「僕たちの能力ってさ、三人向きじゃないことが分かったんだ」
「・・・というと?」
「いいか?僕の能力は強化。強化する人数が増えれば、強化の精度が下がる。例えば、僕と焔で強化したら50%ずつの強化になるわけだ」
二人は頷く。初めてじゃないか?僕の話を黙って聞いてくれるのは。
「そこに析華が加わると30%強に激減だ。そこで考えたのが、『波状攻撃』だ」
「波状?」
「そう。まず二人で掛かる。その後疲労が見えた奴から一人ずつ交代しながら絶え間なく一人150%、二人で300%の攻撃を与え続けられるというわけだ。疲労による攻防力の減退も考えなくて済む」
「・・・なかなか理にかなってるわね。でも、この作戦には穴があるわ」
「穴?」
「相手も三人組って事を忘れないで。さっきみたいにカウンター系の能力者が居たら、相手の戦力は450%、最悪600%まで跳ね上がるわ」
「その場合はケースバイケース。三人からその一人を引き剥がす方法があれば・・・」
「だからそれがまだ出てきていないから苦労してるんじゃない。欠陥がある作戦はリスクが高いから使えないわよ」
「・・・そうなんだよな・・・」
「あのさ。戦闘が始まる前に分断ってどう?」
「どうやって?」析華が眉間にしわを寄せる。
「・・・例えば、色仕掛・・・」
焔の顔に僕と析華の裏拳が同時炸裂する。波状攻撃の実戦データ収集。
「あら、結構使えるわね。さすが300%」ニコニコしている。罪悪感はないのだろうか。僕もないが。
「この状況でそのネタをぶち込めるお前が凄い。尊敬するよ。絶対見習いたくはないけど」
「そういえば、析華。お前読心使えるんだよな?だったら相手の心を・・・」
「それは無理。心は痛みや高揚、興奮がノイズになるの。例えて言えば発掘されたばかりのインダス文字の石版を読む位難しいの」
「それは難しそうだ」・・・というか、インダス文字は未解析だろ。もうほとんど不可能に近いだろうが。
「・・・で、考えついた?」
「でも、戦闘が始まる前に分断って言うのはいいアイディアじゃないか?」
「・・・貴方まで真性の変態だったとは」
「違う違う!誤解!ごかい!」
「じゃあそれで?どうやって分断するの?」
「・・・頼りないけど、罠だろうな。この間焔が引っかかった奴」
「・・・それしかないわね。罠の種類は?まさかお前まで色」
僕の顔に拳がめり込む。
「次は当てるわよ」
「・・・お前に腕の感覚は無いのか!?」
「そんなもの、とうの昔に忘れてきたぜ」
「格好良いようで格好良くない!ただの冷徹宣言だ!」
・・・血も神経も凍ってるのか?・・・こいつなら有り得てしまうところが凄い。
「だから、一人になるシチュエーションになればいいんだろ?じゃこういうのは?一人がまず誘う。そうするとまず最初に二人か一人が十中八九追ってくる。そしたらその能力者を袋叩き。カウンター系は自分からの攻撃に慣れてない筈だから、残るはず。最初の陽動で二人になったら、後は状況に合わせて一人一人潰すか二人一気か。どちらか選べばいい」
「・・・まあ、良いでしょう。・・・で、聞くけど。リスクが高い最初の陽動は誰がするの?」
「それはまぁ・・・こいつだろうな・・・」
僕たちは、哀れみの籠もった目で、まだ昏倒している焔を見つめるのだった。
ありがとうございました。