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四話 勇者の仲間

 勇者になってまず最初にすること、本来は王に会いに行くことだったんだが、どうやら難しいようなので後回しにすることにした。なので仲間集めをすることにした。

 

 勇者のパーティーといえば、戦士か武道家、僧侶や魔法使いが妥当なとこだろう。そして仲間を集めるのに最適な場所、それは酒場だ。

 

 しかし酒場なんぞ行ったことがない俺は、とりあえず近くの店にとりあえず入ってみることにした。


「あのー」

「うちは未成年お断りだよ」

 それもそうか。酒場に未成年が来ても本来ならば意味は無いだろう。というよりこのオッサンがあまりに強面で戦士か何かかと疑ってしまう。バーテンダーにはとても見えない。

「実は魔王を倒す仲間を集めているんですが、誰かいないでしょうか?」

 自然と丁寧語になった。なんか怒らせたら怖そうなオッサンだからだ。

「魔王? そんなの倒せる奴ここにはいないよ」

 オッサンは後ろを指差す。そこには弱そうなのがいるとか、そういう次元でなく。

 50代にさしかかるオッサンばかりだった。

 ハゲ、フサフサ、ウスイ、ハゲ、カツラ。

 昼真から飲んだ暮れている様はとても冒険どころの話ではない。町を出て一歩で教会送りの予感しかしない。

 こいつら仕事しているのだろうか? リストラにあったのに仕事に行っている振りをして、酒を飲んでいるのではないのか?

 唯一強そうなのはバーテンダーのオッサンだが、もっと若くてできれば女戦士とかがいいのだ。

「そんなわけだから、帰んな」

「そうするか」


 収穫もなく酒場を出ることにした。次に向かうのはギルドだ。考えてみればそちらに向かった方が強い奴に出会える可能性が高いだろう。


「ギルドへようこそ」

 夢にまで見たギルドである。強そうなやつもかなりいそうだ。まずは登録しないとな。

「ご登録ですか? 職業は何ですか?」

「勇者だ!」

「え?」

「いやだから勇者だと言っているだろう」

「はぁ。え、でも。あの、勇者だと証明できるものはお持ちですか?」

 なんか勇者に対する世間の風潮が厳しくないか?

 そういえば役所で金を払ったとき、カードを貰ったのを思い出した。取り出してギルドのお姉さんAに渡す。

 まじまじと偽札と疑う店員のごとく確認させられた。

 そして。


「登録料一万になります」

 ここでも? なんかこの人、俺に恨みか何かあるのではないだろうか。だが本人は笑顔で要求している。

 役所で勇者になるためにかなりの資金を消費させられたので、財政難である。それでも登録した時のメリットを考えると惜しくもあったが、今回は仕方が無いだろう。

「ありがとうございます」

 俺は気がつくと、財布からお金を取り出し渡していた。まったくの無自覚であり、そもそも止めようとしたはずなのに。

 やはり世の中顔なのか。美人が得する時代なのか。勇者が損する時代なのか。


 そんなこんなでギルドに登録した俺は本題に入ることにした。

「魔王を倒すために強い仲間を探しているんだが、紹介してくれないか?」

「わかりました」

 いきなり電卓を叩き出すA。もうAでいいよな。

「勇者は三万円。戦士は二万円。魔法使いは三百円。他にも色々な職業の方がいますが、応相談です」

 おそらくは金次第と言いたいのだろう。魔法使いの三百円が非常に気になるところだが、まずなによりも何故俺という勇者がいるのに、三万で勇者を紹介されるのかまったくもって分からない。

 試しに女戦士はいますかと訊くと、は? とヒャドにも勝りし対応をされてしまった。

 

 俺はもう何か仲間とかどうでもいいや、と半ば投げやりに諦めてしまった。考えてみれば俺勇者だし、仲間とかいなくても何とかなるんじゃね? 一人で魔王倒したら英雄確定だし。

 

 俺はこの判断を非常に後悔する事になる。いや、この場合あのAを恨むことになる。


 翌日。公園で野宿(勇者になってから家に帰っていない。帰りたくないからだ)していた俺を。子供が起こす。俺キレる。子供逃げる。自己嫌悪。勇者になると誓う。ここ最近そんな感じだ。

 朝錬と称して剣を振り回していたら、付近住民の目線がいたいものへと変わっていき、俺はそそくさと公園を後にした。

 こんなことをするのにも意味がある。俺はいまだ外での実践、つまり魔物を倒したことが無いのだ。だがいきなり外にでて敵を倒せるのか、という疑問は残る。一応そのための練習をしていたわけだが、やはり実践で鍛えなければ俺自身の実力も測れない。


 こうして俺は初めて外壁で囲われた外に出ることになった。そこには見たことのないよう魔物がいて、それを俺が華麗に倒す。ピンチの女性を危機一髪で俺が救い、救世主扱いされる。


 そんな妄想をしていた。


 だが現実は厳しかった。

「ヤバイ、ヤバイ。死にたくねーよ」

 俺は草むらに隠れていた。近くには俺の二倍はあろうかというオーク。

 そんなばかな。初心者殺しかよ。最初はスライムとかそのあたりが基本だろ。あんなのに出てこられたら間違いなく死んでしまう。

 ひたすら隠れ続けることしかできなかった。


 正直そのあとどうやって街まで戻ったか憶えていない。命からがらとにかく逃げ切ったのだ。


 間違いなく魔王は俺の存在に気がつき、刺客を送っているのだろう。俺が本格的に覚醒する前に潰しておこうと思っているのだろう。だが俺は生き残った。

 やはり魔王を倒すのは俺しかいない。しかしやはり仲間を集めて、魔物を不意を突いてでも囲んでフルボッコしないといけないようだ。

 

 俺がギルドへ向かい歩いていると、思わず二度見してしまう存在が現れた。

 そいつは紛れも無く全裸だった。本人は特に気にすることなく広場前で売っているホットドック片手に歩いている。俺の邪気眼が覚醒し透視能力を会得したのかと錯覚しかけたが、どう見てもアレはただの変態だろう。

「なんか肌寒いな」

 そりゃ服着てないからだろ。おもわずツッコミそうなったが自重した。なんか関わりたくないからだ。男はホットドックを食べ終わると自らの体を見て、驚いていた。

「どうして裸になっているんだ」

 気がついてなかった! それになんで騒ぎになっていないんだ。あの格好でホットドックを買ったらすぐ牢獄コースだろう。

「そこの方」

 こっち見られた。ど、どうする俺?

「申し訳ないんですが、何か羽織るものはありませんか? 気がついたら服が無いんです」

 思いのほか紳士的だが、実際はただの馬鹿かもしれない。

 とりあえず鞄の中にある服をあげることにした。洗濯して返すと言われたが正直返してほしくない。そのまま捨ててほしい。

「あの、お礼に何でもお手伝いさせてください」

 いや結構です、と全力で断ったのだが変態紳士が思いのほかしつこく最後には勇者の仲間になることになってしまった。さらに他にも仲間を連れてくるとまでいわれてしまった。

 変態紳士の仲間。嫌な想像しか思いつけない。

 俺は背中に汗が流れるのを感じながら、その仲間を待つことにした。逃げても良かったがギルドで怪しい魔法使いしか買えないから、賭けてみることにした。


 それが変態紳士ユーキーとの出会いであり、他のありえない奴らとの邂逅でもあった。

 

勇者よりもイタいのが出ています。

次回はさらにとんでもないやつらが暴走します。

良ければご期待ください。

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