2話 勇者狩り
現実はこうも残酷だろうか。
進展が感じられない話。
短いですがどうぞ。
勇者になる、そういい残して飛び出してしまったため、俺は何も持っていなかった。
しかし、このままも家に戻るのも格好がつかない。
とりあえず俺は公園に向かうことにした。
フィオルム公園。ルーノルア州の中でも立派な施設や綺麗さで有名な公園だ。
ベンチに座り地面に落ちていた新聞を拾う。新聞は暖かいし読めば暇つぶしになるからな。
何かホームレスっぽいかもしれん。
いやいや、俺は勇者だぞ。とはいえ最初から無敵勇者な奴もそうはいない。徐々にレベルアップし敵に打ち勝つ。つまり俺の現状も試練なのだ。これを乗り越えてこそ勇者への道が開けるというもの。
とりあえず新聞を開いてみる。昨日の新聞だった。一面には勇者の男が不法侵入及び窃盗罪の現行犯で逮捕されたと書いてある。どうやら家宅に押し入り、つぼを割ったり引き出しを開けたりして現金や、貴重品を盗もうとしたらしい。
「……」
勇者の特権はないらしい。ま、たしかに世界を救うほどの勇者が、家に押し入って現金を盗むのはスケールが小さすぎる。普通王家だろ。
新聞には他に魔王の動向が載っていた。
魔王がいるのはここより北のノースレンドといわれている。北はすごい広いのでどこにいるかを突き止めるのは難しいらしい。それにノースレンドは魔物が多く、軍が防衛線を維持するのが手一杯で、攻めるどころではないそうだ。俺らが住んでいるサウスレンドは魔物は北ほどは多くない。だが別にいないわけではないし、一体いるだけで俺のような勇者ではなく一般人には甚大な被害をもたらす存在だ。攻撃よりも防衛を優先するのもいたし方が無い部分もあるのだろう
ここロービウム王国も防衛重視の国だ。外側は全て高い外壁で囲い、魔物の侵入を許したことは無い。
だが国の外側は違う。外壁の外だからといって、国の領土ではないかと言えば異なる。あくまでも人が多い週を全て囲っただけで、離れた州や集落は囲いの外になる。王国兵や騎士が隊として派遣されているが少数であり魔物相手に苦戦中らしい。
俺勇者だから関係ないけどね。ルーノルア州が無くなっても、まーなんとかなるだろ。サバイバル知識は結構すごいのだ。
俺は新聞紙に包まり、眠ることにした。新聞は落ち着く。
太陽が頂点を過ぎたころ俺は起きた。正確には起こされた。
神聖なる勇者の眠りを妨げるとは許しがたい所業だ。どこのどいつだ? 魔王か?
俺は起き上がり、敵を睨みつける。
正体は年が二桁にも満たなそうな子供たちだった。
子供たちは複数人で俺を囲み、よってたかって持っている棒で突きはじめた。
「う、いて」
棒がとがっているのか、思いのほか痛く感じる。
一人が調子に乗り、棒で叩き出す。
「コイツ新聞紙で寝てるよ、ダッセー。ホームレスだ」
「く、今すぐやめろ。お前たち魔王の手先か?」
おそらく魔王が勇者の存在に気がついたに違いない。
コレは試練だ。この程度の雑魚キャラを蹴散らさない限り魔王以前の問題だ。
「「「ホームレス、ホームレス、ホームレス」」」
合唱された。
だが相手は子供だぞ。勇者が無辜なる民に手をあげていいのか?
「ホームレス
「ホームレス
「ホームレス」」」
「ごらーガキ共、人が紳士でいたら、調子に乗りやがって、てめーら勇者なめんじゃねーぞ」
「「「ギャー」」」
叫び声をあげ、とんでもないスピードで去っていった。
子どもたちは俺の偉大さに気がついたことだろう。
「ふー、そろそろ帰るか」
大分時間を潰せただろう。帰ると言っても一旦部屋に荷物を取りに戻るだけだ。
俺は勇者になるのだから。いや心は既に勇者といっても過言ではない。
権力には屈しないのだ。