ヌヴェル21 さようなら
掲載日:2026/09/12
確かに空は晴れていた。
鰊が大漁だった日に、Sは故郷を捨てて旅に出た。
さようならと誰にともなく呟いて。
確かに雨が降っていた。
仔馬が生まれた日に、AはYをひっそりと見送った。
さようならと唇だけを動かして。
確かに風は吹いていた。
木蓮が蕾をつけた日に、OはUに別れの手紙を手渡した。
さようならと溢れる涙で告げて。
確かに虹がかかっていた。
燕が巣立った日に、NはAに千切れるぐらい手を振った。
さようならと大きな声を響かせて。
確かに星が光っていた。
流れ星が瞬いた時に、RはAといっしょに目を閉じた。
さようならの前がすべて思い出となるように。




