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VR世界の「死神」と呼ばれた俺、実は冷却ファンが故障したせいで、俺の周りだけ物理演算がスローになってるだけだった

作者: 朝霧おもち
掲載日:2026/03/29

「っ、、、今日も重いなぁ」


リュウトは、苛立ちのあまりVRゴーグルを床に投げ捨てかけるが、何とか自我を保つ。


フルダイブ型VRMMO『エターナル・レジェンド』。

その最前線、難攻不落と言われる第七階層。


愛剣を握りしめ、階層ボスである『永遠なる骸骨(エターナルスケルトン)』を睨む。


「いや、冗談抜きで重いが、こんな状態で勝てるのか?」


画面の右上端に目を見やる。

ピン値は真っ赤に点滅し、警告音が鳴り響いている。


「おい、来たぞ、、、」


周りの面々が道を開けていく。


「関わるな、あいつの周りだけ『時間』が止まっている、、、」


いや、重いだけなんだって。


リュウトは心の中で突っ込みを入れる。


あの金髪ロン毛のやつとかギルドマスターじゃなかったっけ。


……失礼な奴らだ。こちとら型落ちのfromメルカリPCと調子の悪い回線で必死になってプレイしてるだけなのに。


その時、永遠なる骸骨が大きく吠える。


この第七階層が難攻不落たる所以、それは永遠なる骸骨による不可視の広範囲攻撃。

予備動作はほんの一瞬、攻略したものはまだいない。


「くっ!総員退却!」


あのギルドマスターの声がする。


俺の視界は、永遠なる骸骨のその剣の動きを、完璧に捉えていた。

自分でも分かる。俺は今、数多のガチ勢達が立ったことのない場所にいる。


その瞬間、あまりの重さに世界から音が消えた。




斬撃は、遅い。


カク、カクと動く剣は、容易によけることができる。


「さっさと終わらせて再起動するか」


適当に愛剣を2,3回ふるってみる。


ゲームの処理が追いついた瞬間。


永遠なる骸骨の体力バーは一気に消滅。

咆哮を上げる骸骨の背後では、岩山が塵と化していた。


周囲の人がざわつく。


「見たか、、、?」

「あぁ、あいつのリーチに入った瞬間、全ての事象が無くなる、いや、全て吸収されている、、、」


ちげぇよ。


俺のラグの中で降った3回分のダメージが、サーバー側にかなりの遅延で届き、過負荷によりなぜか数百倍の連撃となって出力された。


恐らくそういうことだろう。


きっと。


リュウトの右腕は剣の斬撃のエフェクトがまだ残っている。


ギルドマスターたちの動きは完全に固まり、本来なら表示されるはずの第八階層の解放は表示されていない。


「そろそろ落ちるな」


【エラー:サーバーが応答を停止しました】


リュウトはヘッドセットを脱ぎ、現実世界に戻る。


PCの電源を切ろうと、PCケースに手を伸ばした。


だが。


「あっつ!?」


机の上のPCケースが触れないほど熱くなっている。


この瞬間、リュウトはすべてを理解した。


冷却ファンを見てみると、やはり完全に停止していた。

ファンに埃が詰まり、熱暴走寸前の異常高温。


その熱がCPUの演算を狂わせたのだろう。


「奇跡的な『ラグ無双』だったってわけだな」


島崎龍斗は苦笑した。


その頃、運営チームは。




【運営チーム・緊急会議室】


「……報告しろ。例のプレイヤー『リュウト』のログ解析はどうなった」


チーフエンジニアが、青ざめた顔でモニターを見つめる。


冷や汗にまみれ、如何にも不安そうな表情。


一人の女性エンジニアが叫ぶ。


「ダメです! 彼のデータだけ、サーバー内のどの座標にも固定されていません!」


「なんだと?」


「正確には、『常に未来の座標を先取りし、過去の判定を現在に上書きしている』ような……」


「簡単に言うと、未来を現実に持ってくるだけでなく、過去を繰り返しているということか?」


「そうです!」


「未来と現実と過去の相互干渉、、、これは、VRMMO界の歴史が変わるぞ」


エンジニアたちは知らない。


それが、埃の詰まった安物の冷却ファンによるただのラグだということを。


「彼は一体、どんなスーパーコンピュータを使ってこの世界(ゲーム)干渉(ログイン)しているんだ……!」


「これは、休みがなくなりそうですね、、、」


その頃、島崎龍斗は――。


「あー、ファン、Amazonで1,200円か。意外と高いな……ずずっ」


冷めたコーヒーをすすりながら、ネットショッピングに励んでいた。


彼は知らない。


自分のあの3回の振りによって、エターナルレジェンド界に伝説を残し、そして運営チームの休みを奪っていることを。









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