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第2話 二つの顔
ある夜、舞踏会でのマーガレットはいつも通り、最新作のドレスを身にまとっていた。
深紅のシルクに銀の刺繍が施されたそのドレスは、会場の誰もが息をのむほどの美しさだった。
「またあのマーガレット、目立ちたがりね」
「どこのデザイナーに作らせたのかしら、あんなドレス」
陰口が聞こえてきても、マーガレットは微動だにしなかった。
内心ではほくそ笑んでいた。
このドレスは彼女自身がデザインし、一針一針縫い上げたものだ。誰にも知られずに。
「マーガレット様、そのドレスは本当に素晴らしいですわ」
突然、隣国の貧しいながらも才気あふれる令嬢、エリザベスが声をかけてきた。
社交界ではマーガレットの標的の一人だった彼女だが、その目には純粋な賞賛の色が浮かんでいた。
「当然でしょう。私にふさわしいものしか身にまとわないのだから」
いつものように高慢な返事をしながらも、マーガレットは内心で複雑な思いを抱いた。
エリザベスのドレスは明らかに安物の生地で、流行から数年遅れたデザインだった。
それでも彼女はそのドレスを大切に着ているようだった。




