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第1話 秘密のアトリエ
貴族社会の華やかな舞踏会で、マーガレット・フォン・シュタインベルクは常に悪役令嬢として知られていた。
鋭い舌鋒、高慢な態度、そして誰よりも派手なドレスで注目を集める彼女は、社交界の誰もが陰で囁く存在だった。
しかし、誰も知らなかった。
彼女の本当の情熱は、権力争いや陰謀ではなく、裁縫とドレスデザインにあることを。
シュタインベルク公爵邸の最上階には、誰も立ち入ることが許されない一室があった。
そこはマーガレットの秘密のアトリエだった。
壁一面に並んだ棚には、色とりどりの絹、レース、ビーズ、刺繍糸が整然と収められていた。
大きな作業台の上には、裁断された生地やデザイン画が散らばり、窓辺にはマネキンが三体、それぞれ未完のドレスをまとって立っていた。
「ここだけが、私が本当の自分でいられる場所」
マーガレットは深いため息をつき、柔らかなベルベットの生地に手を滑らせた。
社交界では冷笑を浮かべ、辛辣な言葉を吐き続けなければならない毎日。
だがここでは、針と糸、そして創造の喜びに没頭できる。
彼女の指先は驚くほど器用に動き、複雑な刺繍模様を生地に刻み込んでいく。




