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母と私その3

作者: RE crown
掲載日:2026/02/16


母に謝罪されたことがある。


何かと思うと、私が3億を手にする機会を奪ったという。宝くじなら数年前に年末ジャンボを買い、300円しか当たらなかったハズである。それ以降、一度も買っていない。ひとまず母の話を聞くことにした。


母の兄、叔父にあたる人物がいる。これがかなりの人格破綻者である。おそらく、アメリカと北朝鮮のトップから非常識なところと我が正しいという間違えた唯我独尊の概念を取り出して、くれくれママと昨今のシールゾンビの図図しいメンタルと自己愛を抜き出し、ぶつかりおじさんの偏屈さと女性偏見と暴力性を引っこ抜いて壺に入れ蠱毒をすれば出来上がる。


そして、私のことを蛇蝎の如く嫌っているし、私も殺意を抱くレベルで嫌いだ。


私が幼稚園児の時に海で足を引っ張られて沖に連れていかれ溺れかけさせられたのが覚えているエピソードでは古い。幼いころから口達者で叔父の理不尽さを真正面から指摘する私と叔父の相性は最悪で、会うたびに愛想がないだの可愛くないだの理不尽に怒鳴られ、持ち物を破棄されてきた。気の強い母は私を庇い、何度も旅行先で早期解散したりしていた。その後も、接触の都度何かしら起きた。親戚という細い言い訳により刑務所にぶち込まなかっただけであり、犯罪レベルの出来事もある。祖母の葬式で父が代表して弔問の向上を述べ私はその後ろにいたが母と姉と違い「この俺様に挨拶がないとは何事か」と言い、その後もスクーターを置けないか聞いただけの坊さんに怒鳴りつけ、やっぱりさっきの態度は気に入らない、私だけ帰れと再び騒いだりしたことをきっかけに、その日から一切の没交渉だ。


叔父は祖父母の財産を管理の名の下奪い、自分名義の不動産に費やした。祖父とは険悪なまま祖父は他界し、晩年、祖母は叔父と一緒に住むハズだった家を追い出され、母の元に避難していた。

叔父が大人になった私を嫌う理由は、自分が疾しい手段で祖父母の財産を集めたからであり、私が何某かの法的手続きを取ることを四六時中警戒していたからである。録音機を毎日持ち歩いて、ヒステリックに喚いている姿しか記憶にない。


その叔父が、私を養子にしたいと母に連絡してきたらしい。


「天地がひっくり返ってもありえんわ」


私の第一声である。


母も同意した。


母は、「あの人子どもいないでしょ。体の具合も良くないみたいで、財産が欲しければ養子になれ、ならないなら全財産は妻にやって、向こうの親戚に渡す、遺言書も作成したから、それで良いのかって言うのよ」と淡々と説明した。兄弟姉妹は遺留分ないからね、と世界一興味を持てない話を続けながらポテチを齧った。


「それが3億ね、よく言うわ、元はおじいちゃんとおばあちゃんのでしょ。養子になって、散財だけしてから養子縁組解消してやろうかな」


私はその労力がめんどくさいな、と思いながらも、母のためなら相続分を回収するのに骨を折るつもりだった。


しかし、母はやめときなさい、あんたならほんとにやり遂げそうだけど、あんなのと関わって下手に恨み買うことないのよ、と言う。


叔父はさらに、私に今の仕事を辞め、地元に戻り自分の不動産業を手伝わせろ、あいつならすぐできる、と言ったそうだ。それが母の逆鱗に触れた。


「あなたは養子だろうが、人の親にはなれません。私も夫も、娘達の努力を見てきた、あの子達が過労で倒れた時も、歯食いしばって耐えてたのを見たのよ。仕事を辞めたらなんて舌を抜かれても言えない。子どもの選択を尊重して、自分達親は子どもに迷惑かけないようにというのが親として当たり前なのよ。あなたみたいに、自分のために仕事をしろ、自分のために地元に戻れ?馬鹿じゃないの、あの子は親のためにいるんじゃないわよ。2度と連絡しないでください、あの子は養子にしません。あなたの葬式の連絡も不要です」


一気に述べ、受話器を叩きつけると電話コードを引っこ抜いたらしい。携帯が普及してからもしつこく鎮座していた我が家の家電のコードが巻かれて刺さっていないのはそれでか、と納得した。


しかし、母は冷静になると、自分のやり方は正しかったのか、私が断ることが99.9%の予想確率でわかっているとはいえ、娘も成人しているのだから、話を通して娘の意志を確認してから断るほうが良かったのではないかと気になったらしい。


「あんた、3億ほしかった?」


「要らんわ」


被せ気味の即答である。母が祖父母の財産回収をしたくないなら、あの人格破綻者に関わらない今の平穏な生活には3億以上の価値がある。


「お母さんこそ、3億てか、おばあちゃん達の財産いいの?」


「要らないわ、おばあちゃんが残したものなら、アレがあるし」


アレとは、買い物用のカートである。荷物を持たずに済むよう、足腰が弱った祖母はたまに出かける時にはカートを使っていた。ノーブランドの、年季の入った買い物カートは、持ち主が他界した後、母が使っている。


「毎日役に立ってるわよ。お米も入るの」


どうやらお気に入りらしい。15年の靴と20何年かのベージュパーカーに並び、きっとこの先日用品のレギュラーとして長く使われること、間違いない。



叔父は、関わる業者や隣近所と揉めないことがない。周囲を次々と裁判で訴えて、従業員はゼロに。親戚も離れた。金に執着して、代わりに人を失った。その金も、自分の労力で稼いでないため、大事にしないのだろう。だから、金を振り翳せばいくらでも相手が言う事をきくと勘違いしたのだ。


生涯、ひとりであの冷たい豪邸にふんぞり返っていればいい。


母も私も、3億円という大金を逃したが、この話は瑣末なので、母と私の間で2度と蒸し返されることはないだろう。


私は後日、久しぶりに宝くじを買った。

3万円分買って、1等が当たれば母にあげようかな、こんな純粋な気持ちで買えば当たるんじゃないかと期待したが、まず、久々すぎて買ったことを忘れた。私より遥かに記憶力の良い秘書さんから「そういえば、どうでした、宝くじ?」と聞かれて思い出した。できる秘書さんは、当たり番号を印刷して私に持たせてくれた。手ぶらで帰せば、家に帰るまでに再び存在を忘れるだろう事は把握されている。300円が2枚、当たっていた。


母に、宝くじダメだったわ、というと、いいわよ、お金が必要な人に当たったのよ、と言われた。



多分カートは30年いく。

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