mono
白と黒の世界。
白い部分は膨張し、黒い部分が収縮している。
子供がブロックを積み上げたような巨大な構造物・校舎の前に佇むレイス。
色の三属性があったさっきまでの世界とは違い、色相、彩度が明らかに欠落している。
天に昇ろうとする白く輝く丸い物体が明度を作り出しているかのように思えた。
レイスは挙動があきらかに不審になり、あちらこちらを見回し、目を両手で覆う。
「な、なんだこれは・・・」
光そのものに色はなく、光の波長を知覚した目が脳に情報を送りその物体の色を認識する。
認識する器官がおかしくなったわけではない。
覆った手の平に温かみを感じた。暖色の肌色、所々赤みがかかり確かにそこに生命を感じられた。
「おい、誰の能力だ!こんなイタズラして楽しいかぁ!!」
強張る声を張り上げ叫んでみるが、無音の世界に吸収される。
校庭の真ん中で、左を、右を、後ろを見回す。
ふと、上に目線を上げると不整合な白と黒の構造物に赤い色が、
「・・・そこか!」
陸上部顔負けのスタートダッシュで校舎へ走る。
いまにも倒れてきそうな靴箱の前を駆け抜け、段差がチグハグと思える階段を一段飛ばしで昇る。
3階の廊下へ右に折れると、そこに赤色があった。
「どうしてこんなことするんだ。何が面白い。」
息切れを押さえ、肺から残り少ない空気を吐き出す。
赤い色とレイスの距離はどのくらい離れているのだろうかよくわからない。
延べ端なその廊下に飛び出すかのような赤い物体は、2m20cmの天井に伸びていた。
ヒト?いや違うもっと違う何か。
赤と言うよりの真紅のその物体は左右に揺れている。
寒い、摂氏30度近い気温が一瞬に下がる。
握り閉めた手の平が汗で滑る。
「・・・フェリだな、こんなイタズラしてるのは。前は悪かった、、、今度はちゃんと聞くから」
前後に細長い赤い物体には6本の脚があり、その内前脚2脚が鎌状で多数の棘がある。
「・・・俺が悪かった・・・」
頭部は逆三角形で、2つの複眼と大顎が発達している。
「頼む、フェリ話合おう。」
前胸は長く、頭部と前胸の境目は柔らかいため、頭部だけを広角に動かすことができる。
「・・・まさか・・・回収ってこのことか!!?」
触角は毛髪状で細長く、中脚と後脚も細長い。
「頼む・・・もしかしてフェリじゃないのか。」後ずさることも出来ないレイス。
体を中脚と後脚で支え、左右の前脚を揃えて胸部につけるように折りたたむ独特の姿勢をとっている
その赤い生物はまるで巨大なカマキリのようにも見えた。
シャリ、シャリと左右に揺れた刹那・・・赤い鎌が・・・
「飛んで!!」どこか聞き覚えのある女性の声と共に疾風が吹く。
今まで硬直していた足を踏ん張り飛ぶレイス。
疾風に押され後方へ吹き飛ばされた瞬間、赤い鎌が空を切る・・・
中空をコンマ3秒ほどさまよい、背中に鈍い音が響く。
その痛みで嗚咽をもらす。
廊下に背中から叩きつけられたレイスの頭上に、
颪東の膝丈の制服のスカートからおみ足が伸びていた。
「どうして、あんたがここにいるの。」
仰向けのレイスを覗き込む色味があるアユ。
「やぁ、おはよう」安堵の声を漏らす。
「おはよう、じゃないわよ。早く立ちなさい。」
伸ばされたアユの手をとり立ち上がる。
・・・シャリ、シャリ