my Episode 1
ある日私は一人部屋で泣いた。
私は日本で生きるただの一般男性。
名前と年齢は忘れた。必要ないから。
今、私が生きる昭和日本は大日本帝国という名でアジアの覇者となっている。しかしそれは長くは続かなかった。日本が米国領ハワイに奇襲攻撃をして始まった戦争。そう太平洋戦争だ。
それは勝てば英雄、負ければ植民地といった日本史上最大の分岐点であった。
最初は思いもよらない快進撃で米国軍はたちまち撤退、加勢していた英国軍は全滅といった状況であった。しかしそれは「開戦直後」の話だけであった。
読者である君は社会は好きかな。嫌いであってもいい。なぜなら誰でも勝つ方はわかっているのだから。もし、結果を知らなかったらここで知っていってくれ。
米国はすぐに資源と戦力を集め日本を迎え撃った。米国は本土が広くその分資源も人口もある。それに比べて日本は資源が乏しく人口もあまりいない、当時は満州などの地域から少々採取できていたのしてもアメリカには遠く及ばない。
そんななか私に政府から一つの手紙が届いた。勘のいい人ならわかるだろう。
この時代、男性、政府。そう「赤紙」だ。赤紙、簡単には召集令がかかったから戦地に行けということを知らせるそんな手紙だ。
私は一人部屋で泣いた。とにかく泣いた。
気づかなかったが障子一枚向こうで母が泣いていたという。父はいない。先に向こう側に行ってしまった。弟もいない。栄養失調でいってしまった。
しかし泣いていても戦地に行くことには変わらない。変えられない。
逆らえば愛国心が足りないだの反逆者だの言われ殺される。逆らう意味がない
どうせ死ぬのだから。私が戦地に出向けば死が待っている。
神風特別攻撃隊。別称神風特攻隊。戦死を大前提とし、敵船体に若者の希望と未来、搭乗機を破壊する史上最悪な戦法である。私はこれに抜擢された。いや、私の周り皆全員抜擢された。
私は遺書を書かなかった。意図的に書かなかった。家族を悲しませたくなかった。けど茶の間の机に紙をおいた。「今マデアリガトウ.母サンハ参人分頑張ッテ生キテクダサイ.サヨナラ.」書き残した言葉はこれだけ。
出発前夜、母は私の大好きな煮物を作ってくれた。きっと私と最後の食事になるから奮発してくれたのだろう。生活が苦しいのにわざわざ作ってくれた。そんな母の優しさに涙した。母の最後の料理は温かく、そして優しい味がした。
当日、朝日が登る頃には友全員が皮の服をまとい額には日の丸のはちまきを巻いている。
最後の酒、食事をしたあと皆はごうごうとエンジンを轟かせ空に消えていった。
私の番だ。
「特別攻撃隊4番隊、一条。発進します。」