スマホ売りの少女
ある寒い冬のクリスマスの夜ことです。
その日の仕事が終わり、人々の顔には笑みがこぼれ、皆心弾んでいました。
しかし、たった一人だけみすぼらしい格好をした少女がいました。
ぼろぼろの靴を履き、コートもなくとても寒そうです。
「スマホはいりませんか?」
少女はスマホがたくさん入ったかごをもって、街の中を売り歩きました。
しかし今日は一台も売れません。
少女はとほうにくれ、あてもなくさ迷いました。
(ああ、ちっとも売れない。このまま帰ったらまた店長に叩かれるわ)
疲れ切った少女は公園にある路地の少しくぼんだ所に座り込みました。
(少しだけ、少しだけ休んでいきましょう。ここなら風も少しはしのげるわ)
しかし冬の空気は冷たく、少女は体をこすりましたがちっとも暖かくなりません。
(ああ、寒い。スマホを付ければちょっとは気がまぎれるかしら)
そう思って少女はスマホを一台付けました。
すると何ということでしょう、スマホの中に一台のストーブが見えてくるではありませんか。
(まあなんて暖かそうなんでしょう)
少女はまたスマホを操作しました、すると今度はおいしそうなごちそうにクリスマスツリーが映りました。
(まあ、おいしそう。今まで見たことが無いくらいおいしそうだわ)
少女がまたスマホを操作すると、なんと今度は大好きだったお母さんが映っていました。
「ああ!お母さん!お母さん!」
少女は泣きながら母に呼びかけました。
「お母さん、私を連れて行って。私知っているの、また操作するとお母さんはどこかへ行ってしまうんでしょう?そんなの嫌!」
少女は全てのスマホのスイッチを入れました、そうすればお母さんがいつまでもいてくれると思ったのでしょう。
そのとき、一台のスマホのバッテリーが突然爆発し、燃えだしました。
その火はどんどん燃え移り、少女は火に包まれました。
しかしそのとき、スマホの中からお母さんが現れました。
お母さんは優しく微笑み、炎から少女を守るようにしっかりと抱きしめました。
そして少女と一緒にまばゆい光と共にスマホの中へ消えていきました。
その後消防隊が駆け付け、火は消し止められました。
後には焼け焦げたスマホと、スマホを入れていた籠がただ残っているだけでした。