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バグ②

・・・・・・・・・・


 レオとアテナが初めて会ったのは、約四年前のことだった。

 当時十一歳のレオは、巨大なバグの大群に襲われ、両親も住んでいた町も何もかもをバグに潰されてしまった。レオだけが命からがら生き延びたものの、行く宛も無くさまよっていた。

 レオは自分が今どこにいるのかも分からなかったが、身体的にも精神的にも限界で、その場で倒れてしまった。

 目を閉じると、自分の名前がぐるぐると回って、警告音さえ聞こえるような気がした。



 どれだけの間、そうしていたのかレオ自身も分からなかったが、ふと人の気配を感じた。


「ねえ、どうしたの? ……死んじゃってるの?」

 レオが何とか目を開けるとそこには、綺麗な銀髪にエメラルドの様な翠緑色の瞳の少女が居た。それが当時十歳のアテナだった。


「ねえねえ、どうしたの? ねえ名前は?」


 アテナは不思議そうな顔でレオの顔を覗きこみ、質問を浴びせた。しかしレオは声を出すことも出来ず、どうにか指先だけを動かして地面に文字を書いた。


「……0とEとL ? ……逆、LE0、レオかな? ……レオって言うの? 私はね、アテナ。じゃあ、レオ、誰か呼んでくるから待っててね」


 その後、アテナの連れて来たシフル村の人々によってレオは何とか助かった。そしてシフル村の人々は、行く宛の無いレオを村に受け入れたのだ。



 レオにとってはシフル村の人々皆が恩人である。


・・・・・・・・


「お、アテナ発見」


 レオとルシウスの目線の先には、陽の光に輝く綺麗な銀髪の後ろ姿があった。


「アーテーナー! 何か用かー?」


 ルシウスの呼び声にアテナは振り返った。翠緑色の瞳が揺れ、不安そうな表情を浮かべて二人のもとへと駆け寄って来た。


「レオ! ルシウス! ちょっと着いてきて!!」


 アテナは二人のもとへ来るなり、二人はを半ば引き摺るようにしてまた歩き出した。



 アテナが二人を連れて行ったのは、村の隣の小山だった。


「こんな所に何かあんのか?」


 レオが首を傾げてアテナに聞くが、アテナは人差し指を唇にあて、静かにという合図を返しただけだった。

 アテナは何かを探すように周囲をキョロキョロと見渡し、草影に隠れ、呟くように言った。


「……居た……」


 その言葉に、レオとルシウスも草影に身を潜め、アテナが指を指した方向を見た。そこに居たのは、バグと同じ、影のように黒いものだった。

 しかしバグと違うのは、それは昆虫の形では無く、 明らかに人の形をしていた。


「何だよアレ……。バグなのか……?」


 初めて見るそれに、ルシウスは驚きを隠せなかった。

 レオ達は今まで、バグを倒すことに躊躇したことはなかった。それはバグが人を襲う故に、人を守るためバグを倒すことは正しいことだと信じてきた。


 しかし、それが人の形をしているのなら話は別だ。今の今まで、虫の形をしていたからこそ倒せていた。人の形をしていればどうしてもそれが人間ではないかという考えがよぎってしまうだろう。


「……ねえ、どうしよう、あれ」


 アテナは先ほどあれを見つけて、どうしたらいいのか迷ってレオ達に相談したかったらしい。しかし、レオ達にもどうしたらいいのか分からず、口をつぐんでしまった。



 ジジジ……ジ……ジジ……という奇妙で耳障りな音が

三人の沈黙を破る。どうやらその音は、あのヒト形バグから発せられているようだ。

 三人は思わず耳を塞ぐがあまり意味はなく、頭の中で直接響いているかのようだった。ルシウスに至っては頭を抱えてしまっている様だ。鳴り続ける妙な音に顔をしかめていると、音に紛れて何か聞こえてきた。


『追い…け…来い。……のショ…タイを知…たければ』


 それは何者かの声だった。

 レオは、ヒト形バグの声なのか、と思いバグの顔辺りに目をやると、その途端に背筋に悪寒が走った。バグというのは真っ黒で、どこに目があるのかすら分からないはずなのに、目が合った気がしたからだ。


 ヒト形バグはゆっくりと振り返ると、村とは反対方向へと歩き出した。ゆっくり、一歩一歩、ぎこちない動きだった。

 先ほどの耳障りな音は小さくなったが、ヒト形バグの歩く動きに合わせてまだ少し鳴っている。


「なぁ、あれ今喋ったよな?俺達に気付いてんのか?」


 草影に隠れたまま、ルシウスが小声で騒いだ。


「……追って来いって言ってたよな。何かの正体を知りたいならって……」


 レオはヒト形バグから目を離さずに言った。


「絶対ダメでしょ! あれバグだし、危ないに決まってるじゃん!」


 レオの言葉に、アテナは焦ったようにそう返した。


 三人がこう話し合っている間にも、ヒト形バグは歩き続けていた。

 結論の出ない三人を尻目に、また妙な音が鳴り始めた。そしてジジジ……という音と共に、ヒト形バグの歩いた足跡から、何体かのバグが沸くように現れたのだ。蟻や蛾、蜻蛉など、そこそこ大きいものもいた。


「あんなに一度に何体も出てくるなんて……」

「村の方に行かれるとマズイ!!」


 三人はヒト形バグに気付かれるのも仕方無しと考え、草影から飛び出し、村を守るように立ち塞がった。バグの集団は三人に気付き、襲いかかってくる。



「……くそ……」


 レオはぼそりと呟いた。バグの集団の向こう側で、ヒト形バグが見えない所へ行ってしまうのを見たからだった。

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