おっちょこちょいの父
うちの父はおっちょこちょいで、おっとりで。本人もそれを自覚していた。
新しい場所に行かねばならない時は、移動時間を多めに見積もるような人だった。
その父が他界して初めてのお盆。
私と母は色々と準備をしていた。お盆に間に合うように。
それなのに。
『やっぱり家の飯は美味いなぁ』
そう言って、大きな茶碗によそられた白米を、美味い、美味いと食べる父の夢を見た。
母も見たそうな。
どうやら父は早く着きすぎたようだ。お盆は明後日からなのに。どれだけ多く見積もったのか。
多分迷子になると思ったのだろうが、まったくその心配はいらなかったようだ。
父らしいと、母と話して笑った。
お迎えも出来ていないのに帰って来た父の仏壇に、好物を並べた。
犬はどこかを見て尻尾をよく振っていた。私には見えないけれど、そこに父がいるのだろう。名前を知っているくせに、いつも犬のことをチビ、チビ、と呼んで可愛がっていた。
姿は見えないけれど、気配がした。
大好きな、父の。
帰りも早いのかと思ったら、ギリギリまでいた。
常世は意外と融通がきくのだろうか。新発見、かもしれない。
そうして父がいなくなって初めてのお盆は終わった。
来年はちゃんとお盆の時期に来るのかな、そう思っていたのに、また早めに帰って来た。どうなってるのか、常世の門。
三年目は、お盆の時期だけ。それでも嬉しくて、好物を並べた。
お父さん、またね。