たーくん涙のワケ
うちはママが厳しいので、テレビがついていることはほぼない。ついていても、Eテレ以外の選択肢はない。
その日はバタバタしていて、夕食の準備が遅れていた。パパも下の子、かーくんをお風呂に入れなければならない。たーくんはどうしても、放置せざるを得ない。
仕方なくテレビをつけると、きかんしゃトーマスが放送中。しめた! たーくんは乗り物が大好きだ。
たーくんは大人しくトーマスを見続けてくれて、パパとママはミッションを完了した。
マ「たーくん、お待たせ! ごはんできたよ!」
ん、おかしい。いつもならこの呼びかけで、すぐに現れるはずなのに。たーくんは拗ねているのか、テレビの前から動かない。
た「あしがね、へんなの」
たーくんは変な座り方でトーマスを見続けていたせいで、足が痺れてしまったのだった。
た「おくすり、ぬってほしい……」
たーくんは、ぶつけたとき、転んだとき、なんか痛いとき、なんでもワセリンを塗る。今回も塗ったが、もちろん足の痺れは治らない。
た「なおってほしかった……」
ママに抱きしめられながら、微動だにしないたーくんの目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。そう、彼は足の痺れがもう取れないと思っているようだ。……尊い、これが『尊い』という感情なのか。
2分後、元気になってご飯を急かすたーくん。これが、平和だ。