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女嫌い。嘘、ホントは女大好き。

Aniという名前の社会的弱者からアイデアを奪い取り自分の中で反芻した。

「みなさん、今日は転校生を紹介します。内山君、入ってきて」


「今日からこの学校でみんなと一緒に勉強することになりました、内山祐介です。仲良くできたら嬉しいです。よろしくお願いします。」


「自己紹介ありがとう。えっと...あなたの席は...東雲さんの横が空いてるわね。あそこに座って頂戴。」


「わかりました、先生。」


俺の母さんと父さんがこの町に引っ越そうって決めたんだけど、俺はあんまり都会の雰囲気が好きじゃない。どこもかしこも人、人、人、落ち着ける場所なんてありゃしない。前にいた村は落ち着いていて静かだった。だからといって親に文句を言っても何も始まらないし、言ったところで結果は火を見るよりも明らかだ。まぁ実を言うとひと悶着あったんだけどね。


話が逸れたな。それで...東雲さん?隣の席になったんだっけ。


「よろしくね!」と東雲さん。


俺に言ってる...?それとも俺の横の男に?周りを見渡しても彼女に応えようとしている人はいない。


「あなたに言ってるの。わかってるでしょ?見渡しても何も見つからないわよ。」


「アッ..ウン..」


俺みたいな奴に話してかけてくれる子なんて彼女が初めてだ。実際昔は好きな子がいて勇気を出して告白もしたんだけど。勉強に集中したいって断られた。少し後にわかったんだけど俺の親友と付き合ってたらしい。最悪の思い出だ、もう思い出したくない。


「何をそんなに固くなってるのよ。名前はなんだっけ?」


「内山だよ。」


「内山くんね。よろしく。」


突然彼女ははじけるような笑顔を俺に向けてきた。


「ウン..アッ..ヨロシク..」


クソ...可愛すぎる。絶対彼氏とかいるだろ...いるに決まってる。いや、いなかったとしても...何を期待してるんだ俺は...。俺なんかを好きになってくれるはずがない。よし、落ち着こう。夢を見ている場合じゃない。これは絶対に不可能な事なんだ。俺みたいな、魅力のない、陰キャラに...はぁ..


「どうして溜息なんかついてるの?」


「何でもないよ。」


「不安そうに見えるけど。」


その通りだ。町での生活は始まったばかり。友達もいないし、どうやって会話をすればいいのかさえわからない。新しい環境ってのは、俺みたいなコミュ障にはつらい。落ち着いている演技をしていれば、このぎこちなさも繕える。


「俺が?不安そうに?不安なんて言葉は俺の辞書にはないけどね。」


突然雰囲気が変わった。東雲さんは何も言ってこない。嫌な奴だと思われたんだろうか。


「落ち着きも無くて、いかにも不安そうだけど。強がっちゃって。」


あぁ、俺イタかっただろうな...恥ずかしい。


「東雲さん、静かにしなさい!」


「はーい、わかりました。」


よし、もう無視しよう。トラブルに巻き込まれたくない。授業に集中...だ。


「内山くん。」


突然彼女が俺を読んだ。


聞こえない..聞こえない..聞こえない..


「私の方見なきゃ、内山くんの負けだよ。」


「...」


「あっ、見た!はははっ、子供みたい。負けたくなかったの?」


「東雲さん、邪魔しないでくれるかな。俺は授業に集中したいんだ。」


「怒らせちゃった...?」


「怒ってないよ。ただ集中したいだけだって。」


「勉強教えてあげよっか?」


「いらない。」


東雲さんは俺に話しかけてこなくなった。少し強く言い過ぎたかもしれない。これだから俺は友達ができないんだ。


「内山君。」


授業が終わった後、また東雲さんが話しかけてきた。


「どうしたの?」


「私...」


「舞ちゃ~ん!」


突然誰かが彼女を呼んだ。男二人、女二人の四人組だ。


「川合さん...ここにいたのね。」


「外でご飯食べようよ!一馬君も一花ちゃんも田中君も来るって。」


「あ...でも..」


川合さんは突然こっちの方を見てきた。目を合わせない方が良さそうだ。


「転校生?」


「うん。内山祐介君だって。」


「へぇ...そう。東雲ちゃん、行こ!」


川合さんは東雲さんの手を掴んで教室の外に出て行ってしまった。


友達がいて、楽しいんだろうな。都会で生きていくには東雲さんや、彼女の友達みたいにイケてなきゃいけない。彼らはとても美人でかっこいい。俺みたいな陰キャラにチャンスはない。俺は俺みたいな奴を探して友達にするしかないんだ。


「今日の弁当は何だろう...ソーセージと玉子焼きか。母さんわかってるな。」


あぁ、つらい。早く家に帰ってアニメを見たい。前いた村の友達と話したい。


「俺、哀れだな。」


「どうして?」


誰かが缶ジュースを差し出してきた。東雲さんだ。いつの間にか横に座っている。


「東雲さん、さっき出て行ったはずじゃ...」


「今そういう気分じゃないの。あなたのこともっと知りたいし、友達にもなりたいしね。せっかく隣の席になったんだから。」


あぁ...なんていい子なんだ。こんなに嬉しい事はない。これからはこの新しい友達を大事にしよう。


東雲さん...気付いてるかな。


君の笑顔は素敵だ。

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