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#02 童貞は決意した



 城は勘弁してやり、先程まで居た玉座の間を半壊させるに留めた俺は、アンリエッタ姫に涙目で案内された超豪華な部屋でソファにもたれかかっていた。


 ちなみに、今はバスローブ一枚だ。



「……ステータス」



 呟いたその言葉によって、俺の目の前にマンガやアニメ、ゲームでよくある()()()()()()()()()()が現れる。




 名前:ハクヤ 種族:人間 年齢:18 Lv1


 称号:【転生者】【操を守りし者】【異世界の勇者】【暴虐の魔王】【理不尽の権化】【国の支配者】


 祝福(ギフト):【不屈の肉体※】【古今無双の力※】【神託】




 なんつーか、本当に転生したんだな、俺。

 まさか全裸で、玉座の間の観衆の目の前に召喚されるとは()()()()()()()けどなぁ?



「……【神託】発動」



 それよりも何よりも、ステータスを観て()()()()()()ことがあった俺は、()()()から聞いていた通りに、二十四時間に一度だけ発動できる祝福(ギフト)、【神託】を行使する。


 このギフト――要はスキルってヤツだな――によって、俺をこの世界に転生させたあの〝邪神〟と連絡が取れるらしい。

 行使した瞬間、周囲の時間が停止し、部屋の内装はその煌びやかな色を失って灰色の世界になった。



「ちょっとちょっとぉー? 邪神とは失礼しちゃうわね! わたしは〝愛の女神〟なんですけどぉー!? ハイ! 愛の女神セレスティアちゃん、降☆臨☆」


「いや、普通に出てくんのかよ……。そして何が愛の女神だこの腐れ神が。一体なんだよコレは!?」



 まさかの女神本神(ほんにん)の登場に一瞬呆気に取られたが、俺はすかさず問い詰める。文句は山ほどあるし何なら殴ってやりたいが、生憎と女を殴るのは主義に反する。

 とりあえず俺は、ステータスウィンドウを女神に見えるように反転させた。いや、普通に触れたんだもん。



「なんだよこの祝福(ギフト)はよ!? この『※』印タップしたら『※童貞を捨てると消失する』って注釈が出やがったぞ!? それになんだこの【操を守りし者】って称号!? おかげで城の奴らに童貞って笑われたじゃねーか!!!」



 一息に一気呵成に捲し立てる。


 ああそうだよ! アイツらに全裸で召喚されてまずステータスを見せてくれって言われて、そんで開いたらこの称号だ!

 裸を見られた上で、あろうことか俺が童貞だという事実が衆人環視に(さら)されたんだ!!


 大笑いし出したアイツらと……そして顔を赤面させて手で覆ったアンリエッタかわいかったなぁ……の姿を見た瞬間、俺はブチ切れてたよ。そして大暴れして連中を黙らせたってワケだ。


 いきり立ち猛抗議をする俺に、()()愛の女神セレスティアは。



「……テヘペロ☆」



 全身真っ白な羽衣みたいなドレスを翻して、明らかに人外だと分かる美し過ぎる整った白い顔に、これまた真っ白な指を差し、現実味のない妖艶な真っ赤な舌をチロリと見せて、そんなことを(のたま)いやがった。



「俺は今日から趣旨替えする。その白い綺麗な顔に青痣作ってやるから、一発殴らせろ」


「ちょ、怒っちゃいやんハクヤくん!? ごめんて! しょうがなかったんだってばぁ!?」


「何がしょうがないんだ。説明しろ」


「うぅ……! 今絶対本気だったぁ……! 怖かったよぅ……」


「黙れ、説明しろ」



 腕を組んで仁王立ちする俺の前にちょこんと正座する駄女神(セレスティア)が、メソメソとわざとらしくすすり泣きをしながら、チラチラと俺を窺いつつ口を開く。



「この世界〝ミドガルシア〟はね、救済難度が〝SSS〟の世界なの」


「……待て、何だその救済難度ってのは? 転生時にそんなこと一言も――――」


「まあ聞いて。わたし達世界を管理する神と敵対する者達……いわゆる〝邪神〟達が、その世界を滅ぼそうと目を付けているの。あなたはその企みを阻止するために召喚されたの」


「いや、そんなこと転生時には一言も――――」


「だってそんなこと言ったら断られちゃうと思ったんだもんっ!!」



 ……やっぱりコイツ殴ろう。いいよな? 殴っていいよな、俺。



「待って待ってぇ!? それでね!? そんな難易度の世界を救うには、規格外のチートを持った勇者が必要だったの!」


「それが……このギフトってことか?」


「そうなの! 本当にヤバイんだからそのギフト! だからね、お願い! 世界の救済が果たされれば、そのデメリットは救済ボーナスで消せるから! という訳で時間切れだわ! それじゃ、頑張ってね☆」


「お、おい!?」



 あのクソ駄女神……!! 言いたいことだけ言ってさっさと消えやがった……!?


 まあいい。

 体感で10分くらいか。【神託】の効果を確認した俺は、彩りと時間の戻った部屋で、再びソファに腰を下ろす。



駄女神(アイツ)が言うには、相当強力なギフトらしいな。デメリットはセッ〇スできないってことか……」



 頭の中で状況を整理する。

 召喚された時に聞かされた話によれば、俺は〝魔王〟に対する切り札として期待されている。状況から言って、その魔王が〝邪神〟とやらの尖兵なんだろう。


 ソイツを倒せば良いのか?

 そうすればギフトのデメリットは消えて、セ〇クスできるようになるのか?


 ……なら、やることは一つだ。



「前世で29歳まで童貞を(こじ)らせて死んで、転生して若返っても童貞なんて嫌すぎるもんな……」



 決めたぞ!

 俺はこの世界を救ってみせる! そして今度こそセック〇をして、童貞を捨ててみせるッ!!!


 そう決意して、俺は緩んではだけかけていたバスローブの紐を固く結び直したのだった。





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