異世界探訪報告書 0日目 天界
初投稿のため温かい目で見てもらえれば幸いです。
第1話 最初の最期
〜とある一般的な社会人Rの1日〜
朝起きてラッシュを超え出勤し、
昼はエイトクの100円オニギリを頬張り、
夕方オフィスで一人パソコンに向かい、
終電にくたびれて寝場所の家に帰る。
(もちろん休みも給料もマトモではない。)
〜完〜
と、このようなまるでというかハッキリ言って会社の家畜、いわゆる社畜として毎日死にながらにして生きている人間がいた。
彼がとある一般的な社会人Rこと騎平走理
(きひらそうり)である。
あいも変わらずヨレヨレなスーツ、パッとしない顔立ちに、四十路らしい肉体だけの太っ腹、黒縁メガネ、ニキビの残りカス…。
さらには走理だからといいパシリやらアッシーやら呼ばれ、挙句の果てには都合の良い仕事の押し付け役になっているなどとにかくこの上ない程悲惨な人生を過ごしている中々に不憫な人であった。
あっ、ヤバい泣きそうになってくる…。加えていい年こいて自分語りとかこう改めて見てみるとオレって大分悲しい人間じゃん…。
こんな生活さっさと辞めたらNEETに進化できるかな?なんて考えるのも、
明後日の人間ドックダルいなんて思うのも、
よく考えたら異世界転生のテンプレ条件は揃ってるからもしかするとがあるかも?なんて妄想してるのも、そんなのも全てがこんな悲しい人間をつくりうる性格の1つなんだろ?
「はぁーーー…。」
とため息をついてみても、
気にしたりする人なんざいるわけない。
ただのオッサンのため息なんざ。
あ、信号変わってるしそろそろ行くか…。
÷
「…さん。…理さん。騎平走理さん。……返事がない。ただの屍のようだ。というものですか。こんな文化があるとは驚きです。」
と誰かが勝手にオレを屍扱いしてんだが…。
名前をナゼ知ってるかは気になるがそれは置いておいてここは大人の対応といこう。
「すみませんが人をいきなり屍扱いはやめて頂けませんか…。」
「あ、確かに返事をしたから屍ではありませんでしたね。これはこれは。失礼しました。「ええ、分かっ」まあ、死体のあなたにそれを言われるとは思いませんでしたが。」
「は?」
「まあ、実際は魂だけのあなたに、なんですがね。小ジャレたものです。」
「はぁー⁈」
「あ、申し遅れました。私、死亡者管理局局長を務めております、マルトゥーです。どうも初めまして。故人の騎平走理さん。」
…どうやらこのナゼか自分の名前を知っているいきなり人を死体だの屍だのに扱う人?らしきコイツの話によれば、十中八九どころか十中百九オレは死んでいるらしいんだが…。
フツーなら自分が死んだ覚えもその時の苦しみやら何かしら一つは覚えてるはずなのにナゼか記憶にないんだよな…?
「それは覚えてなくて当然ですよ。私どもの仕事は死亡者の皆様に苦しい記憶を持たぬままに転生させる、というものですから。死んだ時の苦しみは1番ツラいですしね。」
あ、そーなんだ。これはありがとうございます。というか声出したっけ?…って、そうじゃなくて!転生だ、って言ってたよな⁈
「いえいえ、どういたしまして。一応あなたも含め皆様死体の身ですから声はでませんが魂の声にはお返事させて頂きますよ。」
どうやらオレは本当に魂だけらしいな…ってそうじゃなくて!転生できるんですか⁈こんなオレでも異世界転生オレTUEEEEEEできるんですか⁈
「異世界転生オレTUEEEEEEができるとは限りませんが、そんなあなただからこそ転生できるんですよ。本来は言わずに済ませたいのですが、一応マニュアル通り死亡した状況をお伝えさせていただきます。記憶も消してありますから流す程度で大丈夫ですよ。」
÷
「おそらく、あなたの最期は信号が変わっていることに気づいたところまで、かと思われるのですが、その先をお伝えしますね。その直後予想通り信号を渡るんですが、よほど疲れてらっしゃったのか、赤信号に変わった途端にあなたは走りだしたのです…。そしてあなたは信号が赤にも関わらずに横断歩道から飛び出し、見事轢かれてしまったということです。さぞかし苦しい記憶だと思いますのでダイジェストでお送りしております。」
轢かれて死ぬのはよくあること「いやいや、あってほしくないですよ。」だからよしとして「というか当然のごとくよくないですから。」テンプレならトラックに轢かれたはずなんだがそこら辺どーなんだろう?
「あ、死因をお伝えしてませんでしたね。一応ショック死なんですよ。確かに轢かれたことには轢かれたのですが…あのー…そのー…轢かれたものはトラックではなくトランクなんですよね。トランク。」
なるほど、そーしてここに来たっていうテンプレっぽい展開だな…ん⁈
え?聞き間違い?トランクって聞こえたが?
「はい、トランクです。」
「大型車のトラックではなくて?」
「はい、トランクです。普通はそうですが」
「楕円形のトラックではなくて?」
「はい、トランクです。確かに走ってはいましたが。しかも走られる側ですよ。」
「BGMのトラックではなくて?」
「はい、トランクです。悲しいBGMは事故現場では流れませんでしたが。」
「農耕車のトラクターではなくて?」
「はい、トランクです。もうトラック要素が半分消えてます上に、暑苦しいのですが…」
は!熱くなりすぎたか…って、違ーーう!
「全然違ってませんから。あなたはトラックではなくトランクに轢かれたのですよ。事実ですから諦めて下さい。」
仕方ないから諦め…れるかよ⁈
なんでトラック、じゃない。なんでトランクに轢かれるなんてことがあるんだよ⁈
「あなたの世界にはAIを搭載したトランク、というものがあったということはご存知ですか?「初耳だな。」何やら地図機能によって人々を案内するものだそうでして、そのトランクのテストプレイを近くの会場で行っていたようなのですが、テスト中にAIが暴走、オマケに道路を爆走してあなたを轢き、あなたは理解が追いつかないまま驚いてショック死、という事の次第です…ご愁傷様です。」
あちゃー…そんな死に方だったのか…こんな事実があるのなら諦めざるを得ないな。いくら何でもトランクに轢かれた、って分かれば誰だってショック死すると思う…。色んな意味でショッキングだ。
「正直信じられない気持ちも充分理解しておりますが、信じて頂けると幸いです。」
あっけない最期だけど、覚えてないだけまだマシな気もしなくもない。色んな意味でイタすぎる死に方なんて恥ずかしすぎる。
「そんなイタすぎる死に方したあなただからこそ、今回は上の方針で世間で言うところの異世界転生オレTUEEEEEEをして頂くことになりました‼︎おめでとうございます‼︎」
そんなにイタすぎるだのネタ役だの言わないで欲しいとはいえども…、
マルトゥー様マジ神だろ。
「いえいえただの局長ですから。」
偉大なるマルトゥー神様、ありがとうございます!
「私は死亡者管理局の局長で神では…」
崇めさせて頂きます!
「ですから…」
ああ、マルトゥー神万歳!
「そろそろいいですか?」
ハイ…
「具体的に能力やら何やら色々設定しなくてはならないので少し気持ちは抑えて頂けませんか…?」
「あ、分かりました…。お願いします!」
「それでは騎平さんが転生して頂く世界から選んで頂いてよろしいですか?」
え?そこからなの?
「」がついたセリフがある理由は後ほど。