1-1-2-5 もしハジュンに勝てたなら、世界は平和になるだろう
「ワン、記憶を映像化できる機器をちょっと改造してもいいかな?」
「はい」
ラージュは、ワンの許可を取り、記憶を映像化できる機器を魔法を使い、少し改造して、未来も想定して映像化できる機器を作った。
ラージュが見てみたかったのは、ハジュンに勝った後の未来だった。その映像を見てみた。ラージュの心の声が聞こえる。
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みんなをハジュンの信仰から離した。18人の神官ももう普通の人間になった。
人々の信仰心を利用したハジュンの最期はあっけなく終わる。それもそうだ。どんな物語もいつか終わるのだ。そうでなければ、もやもやする。
「これで私も終わりか……」
ハジュンが消えた。俺たちは勝った。ビンサール王国が地上を支配している今、そうした体制を改革した。
不老不死という便利な人間になった俺たち。どうして戦争なんてしていたんだろうと、みんな手を取り合っている。こうして、俺たちは平和な世界に、みんなで協力して生きている。
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という映像だった。
ラージュは、泣いていた。「そうだな。こんな世界になるといいな」
だが、映像を映す機器が、壊れたかのようになかなか終わらない。
「ホラー映画じゃないんだから……」ラージュは鳥肌が立っているのを感じた。
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それから何年も月日が過ぎた。俺はいつもと同じ日常を過ごしている。最近つまらないなあ……。
俺は外に出てあたりを回った。
ふと、俺の前を横切ったおばさんに腹が立った。
俺は手をかざして、ファイアボールを放った。
思った以上の威力だったらしく、街の多くの建物が崩壊していた。
みんな俺の方を向いて怒った。当たり前だ。俺には怒られる理由がある。
「ごめんなさい」と謝った。
ちょっと気持ちが昂っただけじゃないか……。イライラした俺は怒ってきた人々をファイアボールで焼き殺した。そんな俺を止めに入るものはいない。
ハジュンなんか召喚せずに、俺が直接支配すれば良かったんだ。
あの世界も同じだ。俺は、あの世界を救いたい。
俺は元の世界のようにならないように、全ての人が確実に死んでもらえるようにした。俺は絶対にハジュンのようにならない……。そうして、俺は全ての人と一緒に生きている命あるものを燃やし尽くした。仲間だった桜、メリー、そしてステラたちも全員焼き殺した。
そして俺は……元の世界を戻した。核兵器も必要ない。俺は異世界の力を持ったままだ。だから両親もみんな生き返らせ、俺を苦しめた連中は殺した。
俺が全てを支配する。それが一番だ。
ハジュンなんて必要なかった。俺はハジュンよりもステラよりも強い。
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ラージュは一言「もしハジュンを倒したら、俺がハジュンになったんだ……」と言った。
ラージュは映像機器を止めた。
ラージュは「てっきり俺は自分がハジュンに絶対に勝てると思い込んでいただけなんだな……」と言った。
ラージュは水を飲んだ。
「俺では勝てない……となるとステラなのかな……」
ステラたちもラージュの映像を見ていた。
ステラは言った。
「私でもうまくいかないよ。ハジュンはそんな風にして人を勝たせるような存在じゃないと思う。私が勝ってもラージュのように、何かきっかけがあって、うまくいかなくなると思う。私も同じ人間だから」
「どうやったら倒せるのか結論は出てる。でも、倒したところで、結局は俺たちの心が負けるんだよな……」
映像は想定を見せただけだったが、ラージュには十分な説得力を持っていたようだ。
ラージュは思った。
"支配欲の支配。それを継続することができなければ俺たちの負けだ"




