1-1-1-8.クラス0での1日目
クラス0には、神官の子が集まっている。
クロウトはその1人だ。
席の周りには男子生徒が集まっている。
「クロウト、お前は信用できないことをしたんだぞ。どうして、気づかなかったんだ!」
クロウトは詰問されて泣き始めた。
「兄のことか?」
男子生徒も泣き始めた。
「お前が気づいてやらなくてどうするんだよ! お前の兄ちゃんだったんだろ! 灰になって、地獄で苦しむことになるのに、その前に救ってあげなくちゃいけなかっただろう!だから信用できないんだ!」
クロウトは席を立ち、膝を地につけた。
「みんな申し訳ない。神の子であるのに、哀れな兄を救ってやれなかった……本当に申し訳ない!」
ステラは教室に入るなり、クロウトが涙を流して膝をついている姿を目撃した。
男子生徒がクロウトを抱きしめた。
「いいんだよ。あの日はクラスが落ちるなんて言ってごめんな。このことは何度も言うかもしれないけど、俺もクロウトも、クラス0だ。忘れないでくれ。だからこそ、クラス0の可愛い女の子を見つけて早く幸せになろうぜ」
「そうだな。あっははは」
ステラはクロウトの前に座ろうとした。
「ああ、そういえば君、ステラさんって言ったか? 」
「ええ」
「あんまりクロウトには関わらないでくれよ。昨日の事件をみんな知ってるんだ。それとも、下賤の民を殺してくれば、まだ信じてもいいぜ。流石にクラス1だと戦争に回す兵を指揮することに問題が生じるから、クラス3以下の奴とかがいいけどな」
ステラは何か考えるように目を閉じ、俯いたまま言った。
「……殺してきます」
「ふっ……無理するな。その勇気に免じて許してやるよ」
男子生徒は特に何もせず、時間は過ぎていった。
ステラは深呼吸した。
教師のシギが来た。
「皆さん、おはようございます」
「おはようございます!」
統一感のある声だった。
クラスがまとまった。
「はじめに、みんなに考える時間を割きたいと思います。みんな、いいですか?」
「はい!」
「昨日、ステラさんが、クラス0のみんなが普段行かないようなところに行きました。それは、クラス2〜4の生徒が集まっているところです。クラス2〜4の生徒は神を恐れるように、ステラさんを見ていました。このように、私たちは地上では神の子として、地上の人々を導く役割を果たさなければならないのです。皆さんは、どのようにその役目を果たしていきたいか。それを今日は考えましょう」
ステラは、目を強く閉じていた。つばを飲み込むと、強い眼力で真剣に話を聞こうとしていた。
クラス0の生徒が言った言葉はそれぞれこのようなものだった。
「私は神の言葉を拠り所としています。神官長の中で仏陀を超えた地位に立つハジュン様はこのように言いました。ーーーいつも朗らかに生きなさい。この世の中で善行を施せ。ーーーと。私はこの言葉に感動しました。神官としての生き方を身につけたいと思います」
「ハジュン様のお言葉です。
---この世界には救われなければならない多くのものが存在する。存在するとも存在しないとも言える存在もある。私たちはそのようなものさえ救っていくのだ。この世に地獄で苦しむものを無くそう。そのための神官でなくして、何になるのだ!---
と。私も強くそうありたいと思います」
「ハジュン様のお言葉です。
---無神論や唯物論が生み出した虚栄を討ち滅ぼせ。これは本格的な幸福の追求に絶対の壁となるものである。魔物はこの心から生まれるのだ。打ち勝ちなさい。心の中にいるハジュンの力が全てを変えるのです---。
私はこうありたいと思います」
「ぼくの兄は、クラス5の女と子どもをつくりました。神官長ハジュン様ならびに神官の方々、そして、クラス0のみんなに本当に申し訳ない思いでいっぱいでした。だから、兄と女と子どもを焼き殺しました!」
その時盛大な拍手が起こった。
「このクロウトは命をかけて、ハジュン様のお言葉を実現したいと思います」
シギは褒め称えた。
「ハジュン様のお言葉を覚えること、教えを信じることは、この世界の幸福の真理に到達することです。ハジュン様は、
---クラスを分けたのは慈悲の現れである。この慈悲が砕かれると皆地獄に落ちる。その苦しみからの救済の手は神官の手で葬ることだーーー
とのお言葉を残しておられます。素晴らしいですね。他にはありますか?」
ステラは黙っていた。
----ハジュン様って誰?
とステラは思う。
その大きな疑問をステラはここで問うてはいけない気がした。
シギは言った。
「ステラさん、あなたはどう思いますか? 」
「ハジュン様は、すごいと思います」
周りから拍手が起こった。
こうして、1日が終わった。
ワタルと桜にハジュンのことを聞くと
「神官長ハジュンとは、神官長として生きる魔王のことだよ。王城にもいたんだけどね」
「えっ!? 王城に? それに魔神の他に魔王もいるんですか?」
「魔神は、魔王とはまた別物だ。でも、やることはほとんど同じだよ。俺たちはそいつらと戦っているんだ」