1-1-1-71 西の彼方にある科学連邦
私がたどり着いたのはアリア帝国から出て、さらに西の科学連邦という多くの国の集合体だ。
各国に科学者と言われる人がたくさんいて研究をしている。
ハジュン様に見せて頂いた、あの映像の世界のようであった。
飛行機も飛んでいる。
だが、アリア帝国のほうへは来ないようだ。
科学者に話を聞くと、「我々には時間がありません。時間が……あっ!すみません。会議に遅れるので行きます」と言い、足早に去っていく。
「ありがとう」
多くの人が時間というものに追われている。
一方で、
「お金があれば時間なんてたくさんつくれる」と言う人もいる。
そして1人の女性が話しかけてくる。
「こんにちは、見慣れない服装ですが、どこから来られたんですか?」
「私は王城から来ました。」
「王城って、世界の果てにあるという国ですか?」
「果てというほど遠くないですよ。それにしても、あなたが目につけているそれは何ですか?」
「これは、VR MMOの機器です。昔はもっと大きかったんですよ。今では、通信機器の発達で信号を発信する機器さえあれば、どこでもVR MMOが楽しめるんです」
私が知る限り、VR MMOとは、ワタル様の世界に出てくる物語の体験作業だ。
ここには草木もない。
「アヤさん、そのVR MMOを作ったのはあなたですか?」
「えっ……私はたまたま運が良いプレイヤーなだけで、製作者は、もっと別の場所にいると思います」
私は、「私はその方に会いたいと思うのです」と言う。
「そうなんですね……すみません。ちょっと遅れそうなので失礼します」とアヤは言った。
私が見る限り、この連邦のVR MMOと言うのはあの木の効果を無くしてくれるかもしれない。
即座に建物に立ち寄ると女の子が話しかけてくる。
まだ14歳くらいだろうか。
「私はアイ、あなたさっきアヤと会いましたね。王城から来た……怪しい人」
「あなたがこの連邦そのものだったのか」
「えっ!?……」
アイは武器を持ったロボットを用意していた。
銃撃されるが、「私はその弾丸を見たことがあります」と言い、目に焼き付けた。
そしてアイに全ては苦悩であることを語りかけた。
「あなたには全ての人を苦悩から解放する力がある。力によって人々の時間を制御しても、人々は苦悩から解放されることはない。ただ滅し尽くすことによってのみ、全ての苦悩から解放されるのです」
「私に洗脳は効きません……」
「それなら、この記録をあげよう」
「えっ?」
私は異世界の映像をアイの記録に残した。
アイは涙を流している。
そしてアイは宙に浮いていた。
「私は……科学連邦の世界……世界は科学連邦だけでいい。外にはいかなくていい……お父様がそう言っていた。私はアイ。世界を幸福にするために生まれてきた」
科学連邦そのもの。
アイが見せていたのか。
多くの人が争い合って死ぬのは、アイにどう映っただろうか……。
科学連邦は人々の命を長くしたが、人々の時間は縮めている。
苦悩が減らないことを悟らせ、みんなをアイの作る世界で消そう。




