1-1-1-54 ケイラとマリア
翌朝、ステラはラージュの顔を見ている。
「すごい汗。どんな光景を見てきたんだろう……」
「お母さん、お父さん、マリア……」
「大変、汗拭かなきゃ!」
ステラは慌てて、ソリやケイラの元へと向かった。
「すみません。ラージュの汗がすごくて」
「そうなのか。すぐに向かうよ」とソリは言った。
ケイラが準備をして、ラージュの元へと向かう。
「兄さん、大丈夫かしら……」
その時だった。
ケイラは意識を失った。
ガタン!と大きな音がした。
みんなそこへと集まった。
「ケイラ!大丈夫!?」
「お兄ちゃん……」
ソリは「いつもこうだな。赤ちゃんの時からケイラは兄の姿を見るとすやすやと眠るんだ。でも、学園に向かうときも心配はしたが、やはり今こうして起こると、どうしたものだか……」
ステラが「夢の中で何かあるのではないかしら」
「夢の中か」とソリは言った。
桜が「見てみる?」と言い、ステラは頷いた。
「何か危険なことはないの?」とステラが聞くと、「それはみんなで行ってみてからのお楽しみ」
「私も行っていいかな」とソリは言った。
桜は「大丈夫ですよ」と言った。
「アイニーたちはどうする?」
「夢の中には人数規制は無いよ」
「行ってみる」とアイニーは言った。
モンシュも頷く。グリドラーも頷いた。
「夢よ来い」と言うと、全員が夢の中に入っていった。
「ケイラ、お願い。私に体を渡して……」
「マリア、この体はあなたには荷が重すぎます。私がもっと健康であればすぐにでも、差し上げられるのですが……」
「そうよね……ケイラ。私のお兄ちゃんであり、あなたのお兄ちゃんである人がいるものね……」
暗闇に照らされた2人。
それをステラたちは見ていた。
「お兄ちゃんは、待ってるの……私には家族はもうあの人だけなの……」とマリアは泣きながら訴えた。
ケイラはマリアを抱き、「本来なら私は消えるはずだったのに……何で入れ替われないのかしら……それもこれも私の体が細くて弱いせい……」と泣いていた。
「ケイラ!」とソリは急いで向かっていった。
「ソリおじさん!」とケイラは言った。
2人からステラたちも見えた。
「どうやって入ってきたの?」とケイラは聞いた。
「魔法だよ」と桜は言った。
「ケイラ、ごめんなさい。取り乱してしまったわ」とマリアは言った。
「マリア……」
「2人とも共生することはできないんですか?」とモンシュは言った。
「……いつもこうなるからもう諦めていたの」とケイラは言った。
「私がいるからね」とマリアは言った。
「いえ、私がいるからよ」
「そんな事ない!」
と2人はまた言い合った。
「本当は仲良しなんだね」とグリドラーは言った。
「はい。そうなんです」と2人同時に言った。
マリアもケイラも、相手を守りたいのだった。
「2人の体だ。私もラージュも大事にするよ。みんなだって守ってくれるさ」
ケイラとマリアは、それに頷いた。
意識が戻ると、ラージュが「また泣いてしまった」と夢の感想を述べていた。




