1-1-1-51 ラージュ
開道渡は、元いた世界で死んだ。
ワタルはこう思った。
ーーーーー人類は「光あれ」と叫んだ。
それは太陽のような生き物を包むような光だったのかもしれない。
だが現代に降り注いだ光は地球を焼き尽くす、地獄の光だった。光あれとはこういう意味ではないはずだ。
それは神による審判でもなければ時代として定められた末法というのでもなく、人間の楽しく生きたいと願う心が満たされたところから生じた、謎の行動、行為だ。それを欲望というのは、簡単だ。それを欲望といったとして、どうしてこうなるのかどういう働きなのか、つまり生命の生きるとか死ぬとは何なのか分からないと結論しておきたいーーーーー。
そして、ワタルは"人類は第六天の魔王に敗北した"と評価した。
今の世界でワタルではなく、ラージュとしての人生を生きると決めた。
ここからはワタルではなく、ラージュと書いていく。
その人生の道のりがどれほどなのか知るものはいない。ラージュ自身も分かっていなかった。
ラージュは、自分の能力で生み出した化け物を倒すために動き出した。
王城からは、教員のシャープロも出てきた。
シャープロは、ブツブツと文句を言っていた。
ラージュは「なぜ追放されたんだ?」と聞くと、「これは、ワタル様、アジャタに出て行けと言われたのです」と答えた。
「今はラージュという名前なんだ」と答えた。
ラージュは、シャープロと一緒になるつもりは無かったが、一緒に行くことにした。
道の途中で、グドラクータに着く。
シャープロは「いやはや、初めて来たはずなのに何か懐かしい感じがします」と言った。
「この地に何かあるんだろうな」
グドラクータを越えると、村がある。
「懐かしい場所だ」
ラージュは言った。
「ラージュ様はここに来たことがあるのですか?」
「様付けはしなくていいよ。ラージュでいい。俺にはもう王城にいた頃の夢は無くなったんだよね」
「はあ」とシャープロは怪訝そうに言った。
「疑っているわけではなさそうだね。ここが俺の住んでいた家だ。今では誰も住んでいないな」
その時だった。
「あっ!ラー……ワタル!」
桜の声がした。




