1-1-1-5.ステラは気絶する
学園に入ることになったステラ。
学年はワタルと桜が3年。
ステラは1年生だ。
クラスは0〜5クラスまであった。
クラスは学園側で決められる。
ステラは0クラスだった。
その教室には、小さな机と椅子が一人一人に用意されている。机の上には大きな本が置いてある。
「ふわぁ〜! すごい!すごい!」
ステラの声は教室に響く声であった。クラスの子はみんなステラを見ていた。
「あの子……誰?」
ステラに近づく男子がいた。
小さな身長で高い声。
男子の制服を着ているが、女の子のように見える。
周りは冷たい目を向けている。
「君、名前は?」
「私はステラ。あなたは……」
「ぼくは、クロウト」
「お前!そいつとは関わっちゃダメだ。そいつはクラスの最下位なんだから。来月にはクラスを落とされる。お前も軽々しく話しかけるな」
ステラは慌てた。
お前という言葉が誰に向けられたものか分からなかったからだ。
クロウトが男子生徒たちに引っ張っていかれた。
「女にヘラヘラする変態野郎が!」
男子生徒たちはクロウトを殴った。
ステラは戸惑って何も言えない。
周りも止めなかった。
教室には笑っている子もいた。
---ここが学園なんだ……。
そうステラは思った。
ドアが3回ノックされ、ゆっくりと開く。
皆静まり返った。
教師が入ってきた。
「おはようございます。席に着いてくださいね」
優しそうな教師。
ステラは自分の席が分からなかった。
「立っている2人?お名前は?」
ステラとクロウト以外は皆席に着いていた。
「ステラです」
「クロウトです」
教師はゆっくりとステラに近づいた。
「 ステラさんは、ここに座ってください。クロウトさんはその隣に座ってくださいね」
クロウトは教室の後ろの隅に、ステラは、その隣に座った。
「ありがとうございます」
ステラとクロウトは、お礼を言うと席に着いた。
教師が話し始めた。
「私は1学年担当のシギです。クラス0には、神官の子が集まっています。それと、教室内の声が聞こえたのですが、クラスを落とすということは、決してありません。ここを無事に卒業してください。それでは、魔法書を読んでいてください。1つでも使えるように頑張ってくださいね」
そう言ってシギは出ていった。
シギが出ていくと、ほとんどの生徒が俯いていた。
生徒は黙って魔法書を読んでいた。
沈黙は昼休憩まで続く。
教室には大人は誰一人来なかった。
「ちょっと来て」
「あっ……」
ステラはクロウトを誘った。
周りは静かだ。
外に出て、2人でベンチに座った。
「いけないよ。こんな事したら君が頭おかしい奴だと思われるよ」
クロウトは俯いて言った。
「いや、この学園おかしいよ。どうしてみんな何も言わないの」
クロウトは顔を上げてステラを見た。
「ステラさん、本気で言ってるの?」
「私、何か変なこと言ってる?」
「いや、知らないの? この学園のこと」
「私はワタルさんや桜さん、メリーさんに誘われただけだから」
「誰なの?」
クロウトはワタルと桜、メリーを知らなかった。
ステラは思う。
ーーーークロウトはワタルさんや桜さん、メリーさんを知らないのか。私には知らないことがありすぎるな。
それに怖がられていると思う。
「学園の有名人かと思ってた。 私の勇者様たち」
「もしかしてこの国の守護者であり英雄の、ワタル様や桜様たちの事?
この国を守ってくれている方々なんだよ。すごいね。ステラは知り合いだったんだ。いい機会だから話しておくよ。この学園のことを、ぼくの知っている限りね」
「うん」
「この学園は王国国立メアリ学園。クラス別で、その地位が決まってくるんだ。人の子としての位の高い方から、クラス1には王族、クラス2には大富豪や大貴族、将軍の息子とか、クラス3には、兵士の息子、クラス4には、王都の民、クラス5には人として扱われない者たちが入れられるんだ。ぼくたちのクラスは0……神の子として、王を導くんだ」
「嘘よ!人間は、みんな同じでしょ!」
クロウトは沈黙してしまった。
「……ステラはさ、世界を壊す魔神アーリマンみたいなことを言うんだね」
「えっ!?」
「魔神アーリマンは、魔物たちを使って人間を殺しまくった。人間は、みんな同じだってね。それに立ち向かったのがクラス0の神官たちと、その進言に従ったクラス1やクラス2の人たちだ。ぼくたちもそのために生きなければならない。戦いには誰かが行かなきゃいけないだろう?」
ステラは戸惑ってしまった。
「うん。確かにそうだね。それなら良いの……私が言いたいのは、人間が分けられているのは、ちょっと怖いなって思っただけだよ」
「怖い? それはそうだね。ぼくの扱いなんて酷いだろう。それはそうさ、ぼくの兄が仲良くなった女と、兄と、その子どもを殺したけど、困ったよ。なんでもクラス5の女と付き合ったりしたんだ」
まるで別の世界に来てしまったようだ。
「殺したって、誰が?……誰を?」
「それは決まってるじゃないか。父さんと母さんとぼくとで、地獄行きの決まった兄と、クラス5の女と、その子どもをそろってファイアボールで焼却したんだ。ぼくは、みんなから殴られて当然なんだ。兄さんを救えなかったぼくが悪いんだよ。恥ずかしいし悔しいことだと思う」
「クロウトはお兄さんたちを殺したの……」
「当たり前だろ?」
「おかしいよ」
「何言っているの? ステラ、君の方がおかしいよ」
その話を聞いて、ステラは意識が遠のいた。
そしてステラは気絶した。