1-1-1-44 ステラの変化
もうダンジョンから出てどれくらい経っただろうか?
私自身の心の地殻変動と、私を取り巻く環境の地殻変動が同時に起こっている。
ワタルや桜、メリーさんとの出会い。
シギ先生やクラス0のみんなとの出会い。
アイニー、グリドラー、モンシュとの出会い。
神官など人間をクラス分けされる世の中になっていた。
ワタルが後悔しているのを見て、まだクラス0〜5を変えられてはいないけど、少しずつでも変えられているんだと思う。
良かったと思いながら、今日もベッドで寝る。
「これが世界の理」
声が聞こえる。聞いたことのある声。
「まさか私を擬人化して、世の中を支配しようとするとは……意味の無いことをするものだ」
この声はアーリマン !?
また!!
お母さん、助けて!
「世界の理の中では、人間はいつだって回転する輪の中をグルグルと歩いているだけだ。第六天魔王波旬と言われようと、アーリマン と言われようと、それが信じるに値する神だと崇められようと、私の本質は変わらない」
あれ?
お母さん?
私の中にいるんじゃないの?
あれ?
「自分のことさえ見えないのに、どうして母親の姿が見えるだろうか? なぜ自分の姿が見えないのに魔神、魔王の存在を認識できるのだろうか? それは、素晴らしいことだよ」
アーリマン の声。
「君は私のことも見たことがあるね」
今度はハジュンの声!?
いや、これは……
前見た夢。
私が目の前にいる。
私が私を鏡の前で見ているはず。
目の前にいるのは……真っ暗で何も見えない。
暗い。
暗い。
あれ?おかしいな。見えない。
「おかしいのは君だ」
魔神?魔王?
「そういうのは敵としてどうなんだ?……つまらないな。 これから色々手出ししようというのに……目の前が真っ暗だなんて」
だって、本当に見えないんだよ……
「みんなの協力と自分の努力」
魔神も魔王も母の声も聞こえる。
でも、周りは見えない。
「魔神とか」
「魔王とか」
「お母さんとか」
「君には本当に見えていないのか?」
恐るべき敵……。
目の前が見えない。私が私を見ていない?
嫌だ。見えない。
私が見えなくなった。
いつまで続くの。
もう終わるよね。
終わらないの?
だって終わらせてよ。
そう私が言っても、何も変わらない。
「何をやってるの! ステラもまだまだね。温かいミルクを入れたから飲みなさい。私と同じ名前のスジャータと言われるものよ」
「お母さん!」
私の目の前に明かりが灯って、私は机の上のミルクを飲んだ。
「美味しい」
「色々あったと思うけど、強くなってるね。お母さん、いつも見てて、思うもの。この子なら大丈夫だって」
お腹が空いていたんだ。
だから悪夢を見たんだ。
「お腹が空いてたり、悪夢を見たりするのは、まだステラが強くなれるからよ。でも、頑張りすぎは良くないわ」
「お母さんがそれ言うの?」
「無理させてたからね。今、ステラは戦っているんだよね。でも、戦っている相手がハジュンならステラの心の中にもいる」
「やっぱりそうだったんだ」
「そこに気づいて、何で闇を払えないかな?」
「こんな悪夢は見たことないよ」
「そうね。でも、これで戦えるよね?」
「お母さん、いつもそうやって……私が倒せないの分かってるくせに」
「倒すんじゃなくて、負けないこと」
「そうだ!お母さん、また現れるの?」
「いつも心の中にいるのよ。もっと強く生きなさい」
「まだ弱いよ。世界だって大変だし」
「前にも言ったでしょ。ゆっくりでいいの。みんな心が強いから。雪山で雪解けを待つように、ゆっくりでいいのよ。はい!それじゃあ、いってらっしゃいね。自分のことを信じて、負けないでいきなさいね」
「あっ!……」
目が覚めると、「お母さん!」と大声で叫んでいたと心配されていた。




