1-1-1-34 クラス5でのハジュン
ステラの教室での出来事から40分ほど経過した。
クラス5。
アイニーとグリドラーはシャープロや、生徒たちが頭を床につけているため、それに従った。
トンッ……。
トンッ……。
トンッ……。
ドアが叩かれる。
シャープロはドアを開けて頭をついた。
冷たい空気になる。
すすり泣く声がする。
「こんにちは」
ハジュンは、入ってきた。
「顔を上げていいよ」
シャープロと生徒たちは顔をあげて、拍手をする。
「シャープロ」
「はい!」
「両手を出して」
「はい!」
その時だった。
床が赤くなった。
シャープロは泣いて喜んでいた。
「どうすればいいか悩んでいたのです……ありがとうございました!」
両手から血を流すシャープロ。
その両手はゴミ箱に捨てられた。
シャープロは、意識を失いかけていた。
モンシュが駆けつけようとすると、ハジュンは言った。
「決して触らないように。分かったね」
モンシュは泣きながら
「はい……」
と薄い声で言った。
ハジュンは言った。
「みんなはそれぞれ命の使い方を間違えないように、ちゃんと生きるんだよ」
そして帰った。
シャープロは
「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます……」と言っている。
そして教室から運ばれていった。
アイニーは聞こえた。
「あの動いたの、今日はクラス4の教室に入れておきなさい。これからも頼んだよ。いつも期待しているからね」
それはグリドラーも聞こえていた。
その声はハジュンの声ではなかった。
誰の声かは分からない。
教室の生徒は聞こえているだろうが、誰も動かない。
手袋をした男4人が入ってきた。手と足の片方ずつを1人ずつ持って、モンシュを連れ去ろうとした。
モンシュはアイニーとグリドラーが自分の目の前に来ているのを驚いて見た。
「ダメッ!!」
モンシュは叫んだ。
教室の生徒たちは体をビクビクと震わせた。
アイニーとグリドラーは黙って瞬時に元の位置に戻った。
手袋をした男はモンシュの口にハンカチを入れた。
クラス4の生徒が叫んでいた。
「ウギャーッ!!!」
「ウギャーッ!!!」
「ウギャーッ!!!」
猿のような叫び声が、クラス5にも聞こえるくらい響き渡った。
シャープロが教室に戻ってくると、シャープロの手は元に戻っていた。
すぐにモンシュの眼球と思われるものがクラス5の教室に投げ入れられた。
「いやー!!!」
聞こえた叫び声は教室の外からだった。
クラス5の生徒たちは黙っていた。黙っていても、頰は濡れた。
シャープロは怒り出した。
「なんて汚いんだ!」
そして眼球を踏みつけにしようとした。
アイニーは動き、それを止めた。
「この眼はモンシュの大事な眼なんだ!」
シャープロは足を止めた。
「早く席に戻れ。どこかでこんなことがあったような気がして腹が立ったんだよ。だからそれを踏みつぶそうとしたんだ。それに人間の眼ではない。いつ使えなくなるか分からない物ばかりなんだよ」
グリドラーは、静かに見ていた。
アイニーとグリドラーはステラにそのことを話した。
ステラは、泣いていた。
「ごめんなさい。助けに行けなくて……」
「いいえ……悪いのは……」
「全員が人質なんだ……」
ワタルはそれを聞いていた。
「俺がこんな世界にしちまったからだ。ごめんなさい」
泣きながら謝った。
桜もメリーも涙を流している。
翌日、大きなあざと大きなかさぶただらけの片眼のモンシュが教室に入った。
泣いている生徒がいる。
アイニーは駆け寄り、
「モンシュ、大丈夫!?」
モンシュは泣きながらアイニーの手を握った。
「助けに来ないでくれてありがとう……。みんなが同じ目に合うのは、もっと辛いから。ごめんなさい。出すぎた真似をしてごめんなさい」
その頃ワタルはハジュンと会っていた。
「権威の力は本当に強いな……。俺たちの世界もそうだった。ハジュン……どうしてこの世界を支配したいんだ?」
ハジュンは言った。
「さて、どうしてかな? それは君の欲求だろう? 君にも私にも分からないんだ。ただ、その欲求を満たしたいからじゃないかな」
「ハジュンはあくまでも俺の支配の及ぶ存在なんだな……」
「この体を作り出したのは君なんだから、そう考えてほしいな」
「俺がハジュンを操れるから、うまく使っていくよ。新世界の神に……なれるのが楽しみだな」




