1-1-1-33 ステラの思い②
私が頭を上げると、そこには2人の人がいた。
ハジュンという人が来るというから1人だろうと思っていたが、2人だった。
髪の毛の無い綺麗な女性と男性だ。
クラス0のみんなは泣いている。
シギ先生も泣いている。
「みんな成長したね。素晴らしいことだ」
ハジュンは言った。
2人とも同じことを言った。
とても冷たい眼だ。
何がハジュン様だ……。
こんな眼の人間は……この世界にはいない。
あれは何だろう……ワタルは魔王と言っていた。
「ああ、見える。哀れな人よ。救われたまえ」
ハジュンは手を合わせた。
みんな嗚咽をこらえられないようだ。
「ハジュン様!お会いしたかったです!!」
すごく泣いている。
可哀想な涙……。
私がどうすることもできない。信じることは自由だ。
「今日はみんなと握手をしよう。シギ先生も立ち上がって」
「はい! ハジュン様……」
一人一人にハジュンは握手して回った。
「頑張れ」
「頑張れ」
「応援しているよ」
と……。
私も手を握った。
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「ステラ、頑張っているな。王城はどうだ?
辛くないか? 苦しくないか?」
「ぼくたちはいつまでも応援しているよ」
「ステラ……負けないでね」
突然私は父と母と兄を思い出した。
私は泣いた。
「頑張れ」
ハジュンの戦い方はこうなのか……。
直接戦うことはない。
私が手をかければ、きっとクラス0のみんなは血眼で私を殺しに来る。
1番手をかけてほしくないものを障害として用意する。それが魔王ハジュン。
許すとか許さないの問題ではなかった……。
負けちゃいけないんだ。
本当に階級制度をつくった人なんだと思って、戦うしかないんだ。
ハジュンは、少しだけ話をした。
「私はね。みんなが楽しく幸せに過ごせたらそれだけでとても嬉しいんだ。みんな体を大事にするんだよ。それじゃあまたね」
それだけだった。
圧倒的に違う。
こんなのを敵にしていたんだ。
これは、恐ろしい敵だ……。
私に本当に勝てるの?
母も魔神もみんな私の心の中にいる。
魔王と魔神アーリマンも人を支配しようとするという関係性においては、変わらないみたいだった……。
これが絶対の権威……。私たちの敵。
ワタルがつくった支配欲の権化。
魔王。
私の心の中にもいる。
分かっているのに勝てるか分からない。今は負けないことだけ、諦めないことだけ考えよう。




