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ステラの世界の歴史  作者: 神曲朗読好き
30/201

1-1-1-30 アイニーの決意

私は、竜の娘だ。

お父さんは湖の主と呼ばれていた。サガラと呼ばれていた。


大海の主に与えられた名前だそうだ。

大海の主もサガラと呼ばれていた。


お母さんはリュネと呼ばれていた。人間だったが、強い絆でお父さんの前に生まれて生きてきたそうだ。

お父さんとお母さんは、幼馴染だったそうだ。


そんな両親から私が生まれた。

竜は切られても死なない。病気もしない。

竜は竜魂が破壊されると死ぬらしい。それか寿命。まさかあの時、父が食われてしまうとは……。竜魂も砕かれた。母も食い殺されてしまった。

-----


シャープロは去った。

治療をしてくれた女子生徒のモンシュと共に、私はクラス5に向かった。すると、誰かが槍を構えて襲ってきた。


人間は私のほうへ来て、お腹へ槍を刺してきたが、深く入ってこなかった。


「私に刺したいの?」


「くそっ! シャープロ先生がクラス5の畜生を連れて行ったから殺そうと思ったのに。全然……ひえ! どうしてそんなことをする!」


私はグリグリと槍を回して奥に入れた。


「私は平気だから」


「あー! そんなことするの!?」


モンシュは治癒を行なった。


「モンシュ。大丈夫だよ。私より、あなたが心配だわ」


槍を引き抜いて、生徒に返した。


「あなた、名前は?」


「いやいやいや………ぎゃーっ!」


生徒は逃げてしまった。


「君はあの時ステラと一緒にいた子だね」


聞いたことのある声だ。ワタルとか言ってたか。


「ワタルですか?」


「そうだよ」


「クラス0の生徒様じゃないですか……」


モンシュの後ろにいた女の子が震えた。


「ああ、この紋様ね。後ろの君たちの反応が本来正しいんだけど、洗脳が効かないみたいだ。どうしてだろう」


「あなたがこの世界をめちゃくちゃにしたんですか⁉︎」


モンシュ?

すごく怒っている。


優しそうな目が怒りでつり上がっている。


「絶対に許さないんだから!」


モンシュを止めようとしたが、私は自分を抑えた。

人間は脆い。

私が無理に力を加えたら、腕が取れるかもしれない。


「いや、すごいな。俺の技が効かない人がいるんだね。この世界を回ったけど、君みたいなのと顔合わせさせてくれなかった創造主を恨むよ。今更なんなんだろう。このクソ設定……」


ワタルも怒っていた。


モンシュが腕を上げて平手打ちをしようとしたが、ワタルはそれを止めた。


「これ、モンシュの物語じゃダメなのかな……ステラといい、お前といい、何なんだよ。全く! 俺は早く消えたいね」


「何でこんなことをしたの!」


「俺は別に何も考えてないさ。俺が主人公になって無双できると思ったら、もっと強い奴が出てきて、困ってるんだよ。現実も異世界も俺はもうどうでもいいよ」


この人は何で人生を諦めているんだろう?

異世界とは何なんだろう?


私の取るべき行動は、まずはこの人を救うことなのかもしれない……。


「大丈夫。危害は加えないから。ただ、見にきただけ。竜の娘か。確かあの本にも竜の娘のことが書いてあったな。もう破り捨てたけど……現実は男も女も別々で何でもかんでも別々で、別々のことをしているだけでいいからね」


「この先どうするの?」


「まあ、気ままに生きるよ。適当に人を殺したいときは派手に殺させて、良いことをしたいときは良いことをするよ。それが人間だよ。本来のね」


ワタルの歪みは向こうの世界で作られたもののようだ。


「異世界とは何?」


「俺は別の世界から来た。ここの世界とは別に世界があるんだ。向こうの世界では自殺した」


「そうだったの。そういえば、私、あなたに感謝してる。あの竜を殺してくれてありがとう。でも、この世界の平穏を奪ったことは許せない」


「あー、あの竜ね。うん。まああそこにステラを置いていきたかったからね。あんな竜でも、ステラは瞬殺かもしれないけどね。すごい世界だよ。ここを創ったのは何者なんだろうね。向こうの世界ではあり得ないことが起こせるから楽しいけどね」


「そうでしょうね」


モンシュが泣いている。


「何でいきなりお前は泣いてるんだ?」


「あなたが1番可哀想だからよ!!」


「俺が? ……また会いに行くよ。俺が主人公になるためにね」


ワタルは風のように消えた。


モンシュは今も泣いている。

ワタルは可哀想だ。

何もこんなことをしなくても良かったのに……。

この世界を歪ませるわけにはいかない。

みんなと一緒にこの世界を取り戻す!

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