1-1-1-29 放課後
放課後の話の前にアイニーは思い出していた。
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「お母様、私と話した人間の頭が爆発しました」
「水中で人と話してはいけません。人の鼓膜は水中の音の振動を感じられるほど発達していないのです」
「障害があるんだね」
「ふふふ、アイニー、どこでその言葉を使っていたのか知らないけど、それは人間の言葉よ。話すことが周りと違っていたら障害。眼が見えなければ障害。耳が聞こえなければ障害。何につけても障害と言われるのが、人間の世界よ。私たちの世界ではそれを神力と呼ぶ。いつの頃からかそう言うようになったの。逆らうことはできない。でも、生きなければならないのだから。そう言うしかないと思ったのでしょうね」
「そうだったの。じゃあ、人間とは話さない方がいい?」
「水と共に生きる私たちと人間が話すのは難しいかもしれないわね。でも、話せる人間が出てくるかもしれないから、その時は話してもいいよ」
「人間の世界か。行ってみたいな」
「行かせてあげたいわね。自分の身を守れるようになったら、行きましょう。人間は最初は仲良くしていた人間さえも殺してしまう、魔神よりも怖い存在だから」
そんな話をした覚えがある。人間。私は、話せている。水中ではないからだろう。
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アイニーは、5人ほどの女子生徒たちと一緒に学校のとある密室にいた。
アイニーは一番最初に目をつけられた。
「いやあ、いい子だ。さあ、脱ごうね」
シャープロは服を脱がそうとしたが、脱げなかった。
「お前、抵抗するのか?」
女の子たちは怯えている。
「私は抵抗していない。そちらこそ、こんなことして大丈夫なのか?」
「お前たちは所詮クラス5で、奴隷以下の存在だと皆思っているからね。分かるか?」
女の子たちは泣き始めた。
「クラス5を決めたのは誰?」
「ハジュン様だよ」
シャープロは、イライラしていた。
「同じ人間じゃない……」
アイニーは呆れて言った。
「同じ人間だと、ハジュン様を馬鹿にするな!」
バシンッ!
アイニーは頰を叩かれた。
だが、こけることは無かった。
バシンッ!
バシンッ!
右と左から、何度も何度も繰り返し叩かれた。だが、こけることはなかった。
「ぐぐぐ……今日は終わりだ。明日は、ハジュン様のお言葉が聞ける。覚悟しておけ!」
シャープロは外へと出ていった。
女の子たちには、泣く生徒もいれば、アイニーの元に向かう生徒もいた。
「大丈夫?」
アイニーは、
「大丈夫」
「今、治してあげるから」
治癒の光だった。
アイニーは、泣いた。
「助けてくれてありがとう」
女の子は言う。
「私は、モンシュ。よろしくね」
「私はアイニー。よろしく」