1-1-3-19 光の中で
工場の中。
多くの人の体が形作られている場所がある。
首を飛ばされた人々である。
彼らは、脳の一部を改造したり、体の能力を強化されたりしている。
そしてまた、何百何千何万何億という年数を過ごすのである。
この地上の人類の命は尽きない。
ただ、生産性の低い人間と評価されれば、生産性を上げて出されるのである。その循環の中に人は生きていた。
桜は言う。
「私たちの世界でもあったかもしれない施設」
ステラは言う。
「ここに何か来るわ」
アイニーが来たのであった。
「早く逃げて!」
桜は言う。
「何かあったの?」
アイニーは言う。
「テレポートをして遠くへ逃げて!」
桜は言う。
「分かったわ。テレポート」
それから数分後。
巨大な煙に工場は包まれた。都市丸ごと包まれてしまった。
そして、煙が無くなると、大きな都市が焼け跡になっていた。
ステラは言う。
「アイニー、ありがとう」
桜は泣き崩れた。
「また、こんなことして……」
アイニーは言う。
「ずっと地上を見ていたの。その間に人は何回も何回も滅ぼしあっていたわ。自分たちのために相手を破壊することを厭わないのが、あの世界から変わっていないみたい」
桜は言う。
「みんな死なないならもう戦争なんてしなくていいと思うけど……」
そこにハジュンが現れる。
「やあやあ、久しぶりだね」
ステラは言う。
「ハジュン!?」
ハジュンは言う。
「そうだよ。しばらく隠れていてね。私もじっと見させてもらったよ。君たちは学園で地上を見ていたんだろう」
ステラは言う。
「戦争の無い世界はできないのかしら」
ハジュンは言う。
「不思議なことにそれは無理だろう。私は召喚されたハジュンだが、あの誓願会で無数の命が誓っただろう。あの誓いこそ、ハジュンではないかな?」
ステラは言う。
「そうね。あなたはそれを勧めただけ。誓ったのは私たちなんだよね」
ハジュンは言う。
「私にも少し哀れむ心があるらしい。まあ、それが本心だからね」
ステラは言う。
「そうだったんだ」
ハジュンは言う。
「私はあくまで召喚された存在だから目に見える。私もそうだが、目に見えないハジュンは、人が気づかないことを喜ぶだろう。あの世界を滅ぼしても人は分からないのだ。自分の責任にはしない」
桜は言う。
「元の世界に戻っても、戦争はどこかで起こるでしょうね」
ステラは言う。
「自分たちの手で殺した命に対して、誰も何も思わない人がたくさんいる」
ハジュンは言う。
「なぜだろうね」
桜は言う。
「都市が一つ無くなったのに、何もできないなんて」




