1-1-3-18 たくさん作って、たくさん消す
首を斬る場所がある。
まっすぐに何人も1列に並べて、機械の刃で、瞬時に首を斬られる。
「どんどん増えるな」
首斬り人は流れるように来る人々を見て言った。
「不老不死の薬なんていう昔の薬のせいで誰も死ななくなったんだ。死なない薬なんて誰が作ったんだ」
首はコロコロと転がり、穴の中へと入っていく。
首斬り人の役割は首を斬る機械のスイッチを押すことだ。
全ての肉は回収される。
どこへ行くのかは分からない。
骨は粉末にされ、山に撒かれる。
「1日に送られてくる人の数が多くなったな。これ以上は仕事量増えるからやめてほしいわ。仕事辞めたら、俺も首斬られるだろうな」
と話す見張りの声がステラたちには聞こえた。
しばらくしてステラたちが首を斬られる番になる。
「身代わりを使いましょう」とステラは言う。
身代わりの首が斬られる。
ステラたちは工場の中を探索した。
首を斬るまでに幾つもの工程があった。
人の流れの管理、肉や骨の処理まで機械で行われていた。
その機械のスイッチを入れる役割の人々がいる。
そこから声が聞こえる。
「おい、誰がこのボタン押して良いって言ったんだ?」
「俺は知りません」
「私も知りません」
「私も知りません」
「お前だろう」
「えっ? 何かあったんですか?」
「お前だろう!」
その声が辺りに響いていた。
そして「やめてください!」と声が聞こえてきた。
ステラたちはそれを見ていた。
桜は言う。
「助けたいけど……」
ボタンを押す役割を持った人は言う。
「あいつは、上の人間に対して首を斬るなと言ったんだ。確か……『人道に反する』とかよく分からないことを言っていたよ。人道に反しているから逆らってもいいことにはならないだろう。人の首を斬るなと言えば人の首が斬られなくなると思っているのか? こっちの首が斬られるよ。全く、何を考えているんだあのバカは、首斬られて当然だな」
そして彼の首は斬られた。
問題なく、遅滞なく、永遠と首を飛ばし続ける。
「生産性の無い人間の首を斬って何がいけないんでしょうね。稼げないんだから仕方ない。首を斬って、頭を何年も改造して、地上に戻ってくるだけなのに。いいと思いますけどね。記憶は無くなりますが……」
「あいつらは時代の敗北者だ。次に首を斬られるのは誰なんだろうな……」
「あの、リーダー、呼ばれてますよ」
「えっ?」
その後、リーダーと呼ばれた男、その部下たち、また警備兵など多くの人が首を斬られた。
そして新しく人々が配置される。
「ここの工場は1日毎に人が変わるみたい。可哀想に」
「誰かの命を左右する権力なんて無いはずなのに……」とステラは言った。




