1-1-3-13 ある日の前耳の日記
前耳は日記を書いた。
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今まで勘違いしていたよ。
ぼくは多くの人と異なっていた。
ぼくは多くの人の役に立てなかった。
ぼくは人に迷惑をかける人生が嫌だった。
死ぬことが誰かの迷惑にならないことだと思っていた。
だが本当は違う。
生きていても死んでも、迷惑をかけまいとしてもかけてしまう。
どこの誰でも生きている限り変わらない。
迷惑だからこそ生きていきたいと思う。
ぼくのことで手一杯の人が死ぬまでは生きなければならない。
その人がいなくなるその日まで生き続ける。
誰かに迷惑をかけても、全ての人が死ぬまで生き続けることで自分が人に迷惑をかけることは無くなる。
これは酷く惨めな生き方にも思える。
しかし、これが1番誰かに迷惑をかけない生き方だと思う。
その中で1つ1つでも恩を返せたならそれは自分の勝利だろう。
100個迷惑をかけても生きさせてくれる人がいる。
その中で1つでも恩を返せたなら、それは良いことだ。
とにかく生きることだ。
そして彼らが死ぬまで生きていけば迷惑をかけずに済む。
何歳まで働くことなく生き続けたと思う?
20代を越えたんだ。
とにかく働くことができなかった。
働くと疲れる。
そして親の金で生活していた。
働くことなく食える生活は素晴らしいと思う。
誰かに迷惑をかけても生きなければならない。
誰かに迷惑をかけても生きなければならない。
誰かに迷惑をかけなくなるその日までぼくは生きなければならない。
ぼくは生きていても仕方ないかもしれない。
生きているだけで迷惑かもしれない。
だがそれがぼくなんだ。
ぼくは誰かに迷惑をかけて、その人の寿命が尽きるまで生きなければならない。
生きていれば死体を処分しなくて済む。
葬式の費用だって必要ない。
この国が死ぬまでぼくは生き続ける。
この世界が死ぬまでぼくは生き続ける。
この宇宙が死ぬまでぼくは生き続ける。
ぼくは生き続ける。
永遠に迷惑をかけても、生き続ける。
生き続けてみせる。
相手が迷惑だと感じることは100年も続かなかった世界で生きていた。
その世界では自分は生きる価値が無いと思って死のうとした。
よく考えたら、葬式費用は誰が出すんだ。
ぼくの特権は迷惑をかけ続けることだ。
ストレスを感じる全ての人が死ぬまでは生き続けてみせる。
そうすれば生きても、死んでも迷惑をかけることはない。
ぼくは迷惑をかけなくなるまで生き続ける。
ぼくはみんなが命を尽くして死ぬまで迷惑をかけ続けると思う。
でも、みんなが寿命を全うすれば迷惑をかけていることも解決する。
ぼくは迷惑をかけ続けるが、生き続ける。
途中で死んだらそれで良い。
でも、誰かが迷惑だと思いながらも、迷惑を感じられなくなるその日以上に生き続ける。
ぼくは生きて、ぼくのことを迷惑だと思っている人々が死ぬまで生きて、迷惑だと思われなくなる人生を送ろう。
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