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ステラの世界の歴史  作者: 神曲朗読好き
171/201

1-1-3-13 1つ分かったように思えること

ステラの授業は続いているが、ステラは一度舞台を変えた。

兵士レオンの敵兵の指導者の言葉を耳にすることにした。


クリムという名前の皇帝だ。

クリムは別の場所で見ていた。

クリムは異世界でのことを思いながら、自らの行動について言葉にした。


「それは一瞬の出来事であった。

私は何もできなかった。


そう。

このように国が動いていってしまう場合がある。


車が交差点で右に曲がろうとしている。

その時、1人の歩行者が青信号の時に横断歩道を歩いていた。


運転手は車を停車させていた。

もう一度言う。

運転手は車を停車させていた。


しかし、歩行者が横断歩道を渡っている途中で運転手は車を動かした。

1人の歩行者を車が轢いてしまった。

歩行者信号は青である。

横断歩道を歩いている歩行者は何も悪くない。


そして歩行者を轢いた。


運転手はすぐにブレーキをかける。

すぐに歩行者を助ける。

歩行者はなぜ自分が轢かれたのか分からない。

運転手もどうして歩行者を轢いてしまったのか分からない。


歩行者は無事だろうか?

急なブレーキをかけたため、前に押し出される人もいる。


歩行者は無事だろうか?

乗っている人に怪我はないか?


救急車を早く呼ばないと。

警察を早く呼ばないと。


運転手は車を安全な場所に停止させ、乗っている人を降ろす。

そして歩行者の状態を確認し、すぐに救急車と警察を呼ぶ。


乗っていた人は呆然としている。


警察に状況を説明する。


話はここまでだ。


どうだろうか?

私は車の運転手なのだ。だが、この運転手のように歩行者を助ける運転手にはなれない。


この車に乗っている。


権力という力を持った車に。

そして乗客は国民だ。

轢いてしまった歩行者も国民だ。


私は気づかない。

あまりにも巨大な車に乗り、横断歩道を渡る歩行者を見ていながら、私は故意にではなく、なぜか分からないが、轢いてしまったのだ。


歩行者は生きていたから良かった。


視界の悪い車の運転手なのだ。

そして轢かれているのは、歩行者という国民だ。


血が出てしまう、あるいは骨が折れて動けなくなる国民。

暴走したのでもなく、ぶつかってこられたのでもない。

ただ何が起こったか分からないが、轢いてしまった。


私の不注意であることに変わりはない。

動いてしまうものを止める力を出さなければならないが、止めているつもりでも動くことはある。

あるいは気づかなかった。

目に見えなかった。


結局は分からない。

分からないから止められずに動かしてしまうのが私なのだ……。


権力とはこういうものなのだろう。

黙って轢かれ続けてほしい。

私の不注意で仕方ないと思って、諦めて轢かれ続けてくれないなら、いっそのこと、車を爆発させてほしい。

私は責任を取れないから、轢かれた時は黙って轢かれ続けるようにしてほしい」


クリムの言葉が流れた時、ラージュは言った。


「これもまた魔王の姿なのかもしれないな……。俺は地上に降りてくる。地上で待つことにするよ」


ステラは言う。

「まずは車が止まるようにしてほしい」


ラージュは頷いて地上に降りたのであった。

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