1-1-2-58 それぞれの感想と気づかないうちにやってくる者
-------ステラ-------
アニメというのを初めて見た。
圭は可哀想だった。朱音も苦しそうだった。
思考を侵されて、自分をなくしてしまった主人公の圭。この世界の人々と同じなのではないかと思ってしまった。
朱音もまた好きでもない存在に体や心を侵食され、その姿を自分を好きな人、圭に見られるのは、苦しかったと思う。
このアニメの世界は異世界で創作されたもの。異世界はとても私たちの世界に似ていると思う。
そう思うと、自分の力の無さ、自分の勇気の無さを感じて、その時の表情を嫌そうな顔と言われたのかもしれない。前耳は、そこまで読み取れる人なのかもしれない……。
ハジュンはどんな人でも自らの味方にする。それを恐れてはいけないし、油断してもいけない。
-------桜-------
あれは……多分18歳未満の人が見てはいけないアニメだろう。
前耳という人が気持ち悪いと思ってしまった。
でも、ステラ達はああいうものを初めて見ただろう。もしかしたら、気持ち悪いとか感じないかもしれない。
「どうしてあなたは自分が裸だと思ったのか?」というような言葉が何かの本で出てきた。私が変な知識を得たことがいけないのかな……。
自分が何者であるかを考えることが無ければ、あれを見ても卑しさなど感じないかもしれない。
私には、あんなのは耐えられない。あんな風にはなりたくない。
何でこんな気持ちの悪い描写を良いと思うのか……私には分からない。
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メアリは、動く絵が映っていて美しいと思ったが、それ以上は何も思わなかった。
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そして、前耳はステラの部屋の前にいた。
ドアをノックした後、返事が聞こえた。
「あのー……入っても良いですか?」
「大丈夫ですよ」
前耳は部屋の中へと入る。
ステラは小さな身体だ。
前耳はステラの姿を見た。
「何かありましたか?」
ステラは前耳に近づいていく。
前耳が手を出そうとすると、ステラの方が早く、何かから守ろうと、胸元に抱き寄せた。
「えっ!?」
「ハジュン、あなたがどうしてここに?」
「私は、いつだって、どんな場所でだって、いつの間にかいる。誰も気づいてくれないのかもしれないですね。私は見て楽しんでいるだけです。それがどういうことか分かりますか?」
「いいえ……」
「ステラたん……苦しい……」
ステラは、前耳に「あっ!すみません!」と謝った。
前耳はハジュンを見ると、ステラの後ろに下がった。
「前耳先生、私に気づいていましたか?」
「気づかなかったです」
「1つのことを教えておこう。私は気づかなかったというようなことが異世界では起こった。これは私がこのような姿になっているから言えるが、私は分からないのだ。気づいたら遅かったという存在にもなり得るよ。これは、君たちがさらなる戦いを続けやすくするために伝えているんだ。異世界の人間は気づいたら滅んでいた。死会という人が、1000万人以上殺していたとしても、それは異世界の時の流れだ。時の流れで、私にようやく気づくと、みんな私の楽しむ姿を見ていただけだ。その光景が未だに放送されていない。どこかで検閲でもされているのだろうか? そろそろ伝えようか?」
そしてハジュンは姿を消した。
前耳は「死会もハジュンも、何者なんだよ。引きこもっていた自分には分からないな……」と言い、倒れてしまった。




