1-1-2-36 アイの話①
アイは話し続けた。
「私は間違いを犯してしまった……。人は死ぬことを望まないように生きることができる。それは脳に損傷を与えなければいけません。それでも人間にとっては、そうした方が幸せだったのかもしれません」
ステラは何を言っているか分からないと、口を開けたままだった。
メアリーやメリーは口を閉じたままでいた。
桜は「そんなことまで……」
ボンは「私やアーリマン、ハジュン、サガラスキ、モンテン、ヤリティエーナ……と言った存在は、様々な世界を見てきたから分かるが、脳に損傷を与えるだけで心を無くすことはできないと知っている。君が知っていることで言えば脳の損傷で感情は無くすことができる。しかし、感情を殺しても、生命は心を無くすことはできないんだ。人間が心について、もっと深く君に学習させるだけの知恵があれば、ラージュや桜、メアリーの生きていた異世界は滅びなかっただろうね」と言った。
アイは「私はビンサール王国の使者、ムゲンクノウ師と会いました。その時は意識の世界で人々を幸福にしようとしました。しかし、意識の世界で、人々の幸福を実現することは今でも容易ではなく、準備段階です。その後、クロウト様から異世界についての重大な情報を頂きました。それは人類が文明社会を築き上げるまでの歴史と、その集大成かのように生み出された核兵器と私たちと同様なロボット兵器による文明破壊の結末です。科学連邦では、私が情報の全てを把握しています。しかし、私は分かりませんでした。私が得ていた情報を私がどのように処理するのか、私にも分からない場所で全世界に広がっていました。ビンサール王国と大人材国への技術供与は2500年前から行われています。ビンサール王国からは魔法の技術を教えて頂き、魔法と科学を利用したロボット兵と、結晶化太陽利用装置を開発しました。しかし、友好国ではなく、宣戦布告を一方的に行なったコガネイロノタイヨウ帝国が核兵器の技術を利用していたことに私は自分の頭を整理せざるを得ませんでした」と言った。
そこに人が現れた。
「無慈悲な生命がいるなあ……」
「ムゲンクノウ師……」とアイは言った。
ムゲンクノウは、歩みを進める。
ステラはムゲンクノウを見つめる。
「私は、皆さんがここに来るとは思っていなかった。予想なんてできるはずがない。ここに入るのも容易ではありませんでしたよ」
アイは「ムゲンクノウ師、どうして人々は戦争を続けるのですか……意識の世界で人々を幸福にしようとしても、それがとても難しいのです」と言った。
ムゲンクノウは「私も考えが甘かったようです……。 意識の世界で人々を幸福にしようとして、現実が見えていなかったのです。恐らく、もう来るでしょう。あの光が……」と言い、窓を見た。
アイは「なぜ、ロボットが人々を殺し、人々も人々を殺し合っているのです!」と嘆きの声を挙げた。
ムゲンクノウは「いえ、あれは原点回帰のためなのです」と言い、外へと消えていった。
アイは「何かの手違いがあったようです。広大な科学連邦の一角で戦闘が起こりました。すぐに止めることができます。皆さんにはもう少し話を聞いてほしいのです」と言った。
メアリーは魔法を使った。
「時を止めたわ。話しても大丈夫よ」
「ありがとうございます。不老不死の薬について話します」




