1-1-2-15 話し合い
ステラたちは、悩んでいた。
すでに魔男王、魔女王は絶対的な存在として信仰され、そうした上で、絶対的な権威の勢力下にある世界。
ダンジョンの中でみんな座っていた。
「3000年間、何もできなかった。不老不死の技術によって、この世界で長く生きるということは保障されている。たとえ戦争が起きても、それは上にいる連中の楽しみでしかない。人が死なないから誰も容赦しない。どうするんだ?」とラージュは聞いた。
「私の母は、クラス0からゆっくりとと言っていたけど、私もどうすればいいか分からない」
ラージュは「人前で自分たちの強さを誇示したら、あの国の連中は驚くだろうけど、それじゃあ権威付けで人々を従える天魔波旬と同じだ。だから、そのやり方はいけないし……」と言った。
シャープロが言った。
「もう降伏しても良いのではないですか?」
アイニーは「シャープロ先生は、それが良いと思うんですか?」と優しめに言った。
他のメンバーも気になっているようだった。
シャープロは「もう勝てないでしょう。3000年ですよ。向こうには、とてつもない力を持った兵器もあります。皆さんには、大丈夫でしょうが、皆さんが救おうとされているのは〝1人も残らず全ての人を救うこと〟ですよね。それは、もうできていると思いませんか?……うん。できているんですよ。だから3000年もこの世界は続いているんです」と真面目に言った。
ボンは
「私はダンジョンそのもの、いや、宇宙そのものとして見てきたが、この世界はいけない」と言った。
シャープロは「3000年間続いてきたのに、何がいけないんですか。みんな死んでも生き返るんです。魔男王様、魔女王様に従って生きましょう」と言った。
ルンルンは「少なくとも世界中の人々は私たちが何かをしても、何も理解できないかもしれません。クラス0の人たちから何かを変えても、もう遅いかもしれません。それほど3000年の月日は私たち自身の尊厳を忘れさせ、代わりに魔男王様、魔女王様への絶対的な信仰の深化を進めたのです。もっと前、皆さんが異変に気づいていた3000年前なら上手くいっていたでしょうが……」と言った。
シャープロは「そうでしょう。もういいじゃないですか」と言った。
桜は「シャープロ先生と同じような人しかいない世界。ラージュの洗脳の魔法で何とか変えられないのかな?」と言った。
ラージュは首を振った。
「洗脳の先にあるのは、盲信だけだ。その盲信は新たな権威への服従を生み出す。今の世界と変わらないよ。そうなれば、世界は永遠に盲信のループをするだけだよ」
桜は「そうだね。シャープロ先生の洗脳は解けないの?」と言った。
シャープロは「私は洗脳などされていません!」と怒った。
ラージュは「洗脳の解除と洗脳は似ている節がある。シャープロ先生、どうしても魔男王、魔女王に付いていきたい?」と聞いた。
シャープロは「付いていきたいです」と答えた。
ラージュは「また追い出されたらどうする?」と聞いた。
シャープロは「乞食にでも何でもなります」と言った。
アイニーは「シャープロ先生の面倒は私とモンシュで見るから大丈夫です」と言った。
シャープロは「何を言っているんだ?」と聞いた。
アイニーは「ここから出て行ってはいけないと言っているんです」と言った。
モンシュも「アイニーが言うなら」と答えた。
サガラスキは「なぜそこまでシャープロにこだわる?」と聞いた。
アイニーは「火事で死にそうになっていても先生は変わりませんでした。私はただ心配なんです。このまま先生が死んでしまうのではないかと。この人は大事な友達の家族を殺そうとした人ですが、その家族が守ろうとした命の1つです。私はシャープロ先生というより、シャープロという命を守りたいと思っています」
と答えた。
サガラスキは「なら私も応援しよう」と言った。
シャープロは「えっ、私は?」と言った。
ラージュは「まだ残ってほしい」と答えた。
モンシュも「お願いします。シャープロ先生の命は必ず守ります」と言った。
シャープロは頷いた。
ステラは「こうやって一ずつ命を守っていくしかないんだね。お母さん、私、ちょっとやり方を変えるね。異世界では、命を落とす人もいたかもしれないけど、もう何も行動せずにはいられないよね」と言った。
モンテンは言った。「ステラたん、唐突だが、スジャータの言葉を伝えるよ。君が眠っていた時聞いていたんだ。君の名前の由来は、糸を紡ぐように強い子スートラと。それを言いやすいようにステラにしたと言っていた。これからだよ。糸を紡ぐのは。私も応援しよう。命を守るために」
ヤリティエーナも「私も1万人に減ったけど子どもたちと応援するよ。魔物も味方にして、命を守っていきましょう」と言った。
グリドラーは「私も命を守る糸を紡いでいきましょう」と言った。
メリーも、マリアも頷いた。
後書きというか感想になります。
今回も日曜日朝のアニメの影響を受けたり、色々な本の影響を受けて書いています。
「生きたい」と強く思って、勝つことよりも負けないことを信念として、戦いを起こしていくことが大切なのか。
すごく良かったです。敵も、とても強くて、本当に表現が豊かだなと思いました。
そんな風には敵も味方も書けないですが、今後も主人公たちと、第六天の魔王の勢力との戦いを、1億字かけて書いていきたいと思います。




