1-1-2-12 諦めない心
桜はステラを連れて、ダンジョンから外に出た。みんなには外の見張りと伝えた。
桜はステラに「私は、ゆっくりとしていられないかもしれない」と伝えた。
ステラは「桜……」と言った。
「ステラだって分かっているはずだよ……」と桜は言った。
「私も、このままじゃいけないと思っている。でも、もし今動いたとして、世界の未来があるかと言えば、決してそうではないから……」
「うー……そこを突かれると私もそうなんだよね。ラージュもそうだった……」と桜は言った。
ステラは上を向いた。遥か上には王城がある。ステラたちであれば簡単に倒せる敵がいる。
「もし、私たちがラージュのように、私たちの中に潜んでいるハジュンに心を支配されないほど強い人間だったら、私は喜んで彼らを打ち滅ぼしに行くわ」とステラは言った。
「私もそこだけは自信が無いな……」
一方、ラージュはルンルンと話していた。
「ルンルンさん……。みんなどうして魔男王、魔女王を信じているんですか?」とラージュは聞いた。
「私は、恩があるからです。多くの人が魔男王様、魔女王様に恩がある……そう考えていると思います。ですが、ワンさんの記憶の映像を見て、私なりに思うところがありまして、今では、少し疑っています。皆さんは、どうして魔男王様、魔女王様を信じていないのですか?」
「あいつは魔王だから……」とラージュは言った。
「魔王……フキゲン先生も言っていましたが、魔王とは何なのですか?」
「魔王は、いろいろと悪いことをする存在の王だ」
「悪いことですか……。例えば、複数の人たちと鉄の部屋に閉じ込められて、自分は起きているのに鉄の部屋を壊そうと行動をしない。こうした行動は悪いことですか?」
「それは悪いことかもしれない。でも、開けられないから仕方ないのか」
「悪いことをしているとしたら、魔王の行動と言えますか?」
「いや、言えない。魔王はむしろ鉄の部屋に閉じ込める側の存在だな」
「そうなんですね。そうなると、この世界が鉄の部屋で、みなさんは目を覚ました人たちと言ってもいいかもしれませんね」
「そうだと思う」
「鉄の部屋から、いつか出られるといいですね」
「いつかがなかなか来ないんだよな……」
ラージュは上を向いていた。
ルンルンは言う。「ここで話してみて、少しずつ分かってきました。私は神様たちと違う存在だと思っていましたが、もしかしたら神様たちは同じ人間なのではないかと」
「同じ人間だよ。それを信じて生きているのがステラなんだ。ルンルンは驚くかもしれないけど、かつて俺は、魔男王や魔女王を単なる操り人形くらいにしか思っていなかったんだ。ステラに会って、いろいろ変わったような気がする。だから、希望は捨てないでいきたいんだ」
「あなたが元は魔王のような存在だったんですね。ですが希望であるステラと会ったことによって少しずつ変わったと……。私は、もっと見ていたいですね。この世界のことを考え、最も希望に満ちた世界の未来のために、諦めないでください」
「ああ、分かった……諦めない。諦めないよ」とラージュは大事なことなので2回言った。
ハジュンが目立ち過ぎなくらい目立ってくれたら、世界はもっと簡単に見えるだろうと思う。この物語では、かなり大胆にハジュンが人に害を及ぼしているように見える。本当はもっと複雑な駆け引きとか表現してみたいけど、元々噛み合った話はしてこないで生きてきたので、噛み合った会話や複雑な駆け引きのある会話とかの表現は難しいなと思います。そのため、このまま書き進めていきます。
最近は王昭君、則天武后、玄宗皇帝、織田信長などの出てくる歴史小説を読んでいます。久しぶりに本を読んでいる気がします。




