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第二話-伊藤淳

へたくそですが許してください

 何分歩いたろうか。普段の伊藤ならばここでへたれ込み、1時間の間食タイムが始まっているはずだった。


 しかし伊藤は今日に限ってははつらつと、体脂肪率45%の脂肪を揺らしながら歩いている。いや、スキップに近い。


 彼が新任の大学教授から天候観測を依頼されたのは3日前のこと。当然彼は顔の肉を弾ませながらブルドックの如く顔を横に振るわせた。お天気ファンドが設立され経済学にも天候の変動という複雑な考え方を取り入れる動きが出てきた。それは分かる。だからといって僕に遠出をさせると?空気読めよといった言い訳が冷房効いてるはずなのにテカってる顔から飛び出し、ついでに彼の脂肪の貯金を制御するためのサスペンダーが音を立てて外れ教授の体に当たった。


 「ぶひぶひふごふごうるせぇなぁ?脂尽きすぎて売れそうに無いB級品の豚のくせに鼻声だけはSAMURAIジャパンか?」という自分の進退に関わり兼ねない問題発言を発しかけたが。


 「ぶひ・・・いや部費じゃねぇや。研究費から旅費だしてやるから好きなところでやっていいよ」と何とか自分の感情を抑え、伊藤淳という名のラードの塊に提案をしてみた。


 伊藤はしばらく考えた後渋々提案に乗ることにした。


 伊藤は自分の祖母の家に行くことににした。大学に入学後6年近くは顔を見せてない。せっかくだから観察ついでにどんな様子か見てみようと思ったからだ。


 日本が金融国家として繁栄する中での数少ない里山が伊藤の故郷である。東京から北へ新幹線で1時間、さらに今時珍しいワンマン電車で30分脂肪を揺さぶられついた無人駅からさらに1時間歩いた先に彼の街がある。いつもは駅前に何台かタクシーが停まっていたが今日に限って一台もない。しかし彼は久しぶりに祖母に会えるといううれしさからか徒歩で歩いても問題ないだろうという風に考えた。


 だが彼の思いに対して体はなれない運動に悲鳴を上げ始め、彼の思いも疲れで薄れ始めていた。疲れた、帰りたいという気持ちが強くなっていくが、やっとどことなく見慣れた風景が見えた。


 伊藤は目の前の風景を見て呆然とした。彼が小さい頃祖母と遊んでいた公園と思われる場所はコンクリートで舗装され、その上にフ○ミリーマートが出来ていた。彼が高熱を出して、祖父に負ぶられ運ばれたレンガ作りの大病院があったはずの場所は今は灰色の工場に建て替えられてた。


 この光景は伊藤には残酷だった。中学の頃に読んだ中国の偉人の書いた小説を思い出した。彼もこんな気持ちだったに違いない。文明の発達は何て残酷なんだと、伊藤は涙ぐんだ。涙ぐんだ目で見た街の案内板は自分の村が隣にあるという事を示していた。


 なんてことだ・・・街も移転していたなんて・・・ん?移転?


 後々彼は彼がいなくなった後に区画整理があって不思議なことに彼の町とそっくりな作りになっていたことを近くのファミ○ーマートの店員から聞かされ、それと同時に彼はさらに何キロも歩かなくてはならないことを悟り動けなくなった。

残念。

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