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003 回想3
ここで亡くなった方の魂を、正しい道へと導く。
誰に頼まれた訳でも無いが、そんなことを始めた私。
救急車のサイレンが聞こえる──
(……この方も……助からないわ)
自分が亡くなってからというもの、サイレンの音が聴こえただけで、その方が助かるかどうかが分かるようになっていた。
どれくらいの月日が流れだんだろう?
あることに気づいた。
(あらっ? あの白衣、動きやすそうね!)
自分が看護師になった頃はワンピースタイプの白衣にナースキャップ。誰がみても看護師スタイルだった。今は、パンツタイプの白衣にナースキャップは無くなっている。衛生上安全上の理由があるそうだ。
会話を聞いて気がついた。あの子たちのことを看護師と呼んでいる。
私の名札は『看護婦 衛藤 千代』となっている。あの子たちの名札は看護師と表記されている。
時の流れを感じながら、今日も霊安室へと運ばれて来るご遺体から、魂を引き離す──
(……さぁ、迷わず進みなさい)