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30.次の目的地と、ワレリーの動向

 ユウトはその後、パネルを全てチェックする。

 エリは後ろからユウトの姿を眺めるのみだ。


「ああ、エリ。ちょっと時間かかるだろうから座ってていいよ」

「うん。……何やってるの?」

「えっとね、武器と防具を調べてるんだよ」


 ユウトにとって、やりこんだゲームのアイテムを暗記することは難しいことではない。

 何もない状態から全てのアイテムを思い出せと言われると難しいかもしれないが、少なくともそのアイテムの名前を見たことあるかどうかについては、完璧に分かる自信があった。


 だから思ったのだ。

 ここに、今エリが持っている『髪切焰紋藤枝』『異教のタリスマン』は、明らかに自分の知らない……つまり転生モード専用武器。

 その能力は間違いなく、一段階上であると思われる。

 ……同時に、必要能力値の要求値も一段階上なのだろうとも。


 それ故にユウトは、自分の知らない要素があるのなら、徹底的に調べ上げるべきだと思ったのだ。


「他にも……ああ、わずかだけどある……落ちている場所は……これが『マルディールの研究室』で、これは……『呪いの樹海』」


 淡々と調べる様子を、エリはじっと見ていた。

 真剣な横顔もまたエリの好みだった。見ているだけで飽きることはない。


「そして、これは……『帰らずの城』!?」

「えっ!?」


 その名前は、エリにとっても記憶のある場所。

 一番最初に転生してきた、あの廃城である。


「そうか、まだあそこを徹底的に調べてなかった。外に出ることばかり考えていたんだ」


 ユウトはすっかり、外も含めて未知の場所だったから油断していた。

 あの扉の向こうそのものが、全く知らない場所だったのだ。外に出る前に徹底的に調べるべきであった。


「……よし、調べ終わった。エリ、早速だけど、ここにはもう残っているものはなさそうだから、帰ろう」

「うん。……結局ワレリーは取り逃がしちゃったね」


 エリの呟きに対して、ユウトは首を振る。


「気にすることはない。どうやら僕達も知らない情報を知っているようだし、何よりそれらを引き出せないうちから迂闊に攻撃はできない。各地で騒動を起こしているのは気になるけど……でも同時に、どうにも気になるんだ」

「……気になる、って?」

「オーガストフレムのことだよ」


 ここジュライミストに来る前、ユウトとエリはオーガストフレムでのボスを倒していた。

 そのボス発生条件は住人による召喚魔法であり、ゲーム中では別の存在がボスを出現させていた。

 しかしあの時、ユウトはゲームとは全く違う展開でボスが現れたなと感じていた。


「つまり、何らかの理由で、ワレリーはゲームの進行を……ゲームマスターのような役目をしている。それ故に、こんなシステム側のような場所を理解しているんだ」

「じゃあ、ジュライミストも?」

「ジュライミストは滅ぶ街じゃないけど、それでも多少はあの対人戦で殺し合うし、実際にグレーターデーモン達は遺跡の中から何体か現れるんだよ。それは地下の隙間から現れてきたような感じだったけど、見てみたら建物の損傷はなかった。だからワレリーは、そのグレーターデーモン出現の条件を整えていた形となる」


 一連のワレリーの行動。

 それは間違いなく、ゲームのボスをゲーム通りに出すための役目だ。

 二度同じことをしたが故に、ユウトはそれが偶然とは思えなかった。


 恐らく、ボスを倒している内にもう一度出会うこととなる。

 ユウトもエリも、それを感じ取っていた。


「エリ、はっきりとしたことは言えないけど……ワレリーは何か、この世界とは隔離した存在のような気がする」

「……うん、確かにそうだね」

「多分、僕達がボスを倒していくうちに、間違いなくまた出会うことになると思う。だから、まずはワレリーのことは忘れて——」


 ユウトは、最初の方に触ったパネルの一覧を見る。

 ユウトにとっては見知った、エリにとっては全く知らない、ゲーム内部のボスの名前。

 ちなみに、ボスの詳細な情報は見ることができなかった。


「このボスを全て討伐していく。その方向でやってみよう」

「うん、わかった。それで最後に何が出てくるか……だね」

「そういうこと」


 この場所での探索は終わった。

 最後にエリが操作して、元の形になるように入り口を閉じて、近未来的なリモコンを壁の中に隠す。


「起きてたってばれちゃうからね」

「確かにそうだね、気を配ってくれてありがとう」

「えへへ、お礼を言われるほどのことでもないよ」


 それでも、こういった細かいところからほころびが生まれる可能性は高い。

 エリの油断なき判断はユウトにとって非常に助かるものだった。


 まずは、あのザガルヴルゴスのいた場所にあった、謎の武器。

 その場所に行こう——と思ったところで、ユウトはエリを見上げる。


「?」


 明るい顔で『何?』というように首を傾げるエリ。

 その明るく朗らかな内面は、オーガストフレムから離れたときに少し寂しそうな顔をしていた。

 きっと今回も、優しいエリはそうなるだろう。


 だから。


「先に、ジュライミストに寄って報告してから、次の旅に出向こう」

「……! うんっ!」


 エリの太陽のような満面の笑みを浮かべて、ユウトは自分の判断は正しかったと頷いた。

こちらの話とは関係ないのですが

https://twitter.com/MasamiT/status/1183761799855783936

別の連載作品が商業作品として配信開始されましたので、是非是非そちらも読んでくださいませ

https://ncode.syosetu.com/n3567es/

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