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勇者の従者は泣き虫アサシン  作者: SHO-DA
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終章 そして、主都へ・・・

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 結局、俺のHSW(必殺技)が、まともに敵に振るわれることは一度もないまま、ブレイカーズは失われた。ち。せっかく軽戦士系スカウトを経歴偽装に使おうって思ってたのに。

 種族決闘の中、昼間で、乱戦で、野外戦の不利な戦闘条件でも、つい卑怯な不意打ち・・・アサシンの地が出てしまった。そんな自分にがっかりだよ。

「なんのかんの言っても、あなた、敵を3体仕留めたのよ・・・卑怯でもいいじゃない。」

 だから、それ、慰めにならないんです、コルンさん。フン。どうせ俺はアサシンですよ。

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終章 そして、主都へ・・・


 後日である。もともとのあいつは屯田設営のために軍を率いて来たマーシャル種だった。軍の敗北に耐えられず、その妄念が、周りの敗残兵をむさぼり、『雑食』のルーンを顕現させたらしい。

 屯田の技術を得たオーク族は、大軍を編成できるようになった反面、絶え間なく外征に出るようになってしまった。戦い、奪うことへの渇望。それが『雑食』のルーンの顕現を促した。しかしその一方では、膨張しなければ人口爆発に耐えきれず自壊する恐れすら生まれた。これは種族的な成長なのか、あるいは危機ではないのか。 

 オーク族にとって屯田兵の技術は、もろ刃の剣となった。

「あの糞坊主はここまで見越して、オーク族に屯田の技術を供与したんでしょうか?」

「さあね・・・考えそうではあるけど、ね。」

 俺はいつものように、コルンさんの部屋に、お茶とクッキーを持っていった。そして、オークチャンピオンについての調査報告を終えたところだ。ふと食べかけのクッキーを見る。

「コルンさん、ホルゴスでクッキーの話をした時からここまで、長かったような、あっという間のような・・・。」

「そうね・・・今度から、もっと十分に下調べを済ませてから探索に行くことにしましょう・・・毎回これじゃ、国が何個できて、クッキーがどれだけ増殖するのやら・・・。」

 疲れ切ったコルンさんの声が、この戦役での、俺の最後の感慨でもあった。


 北方領は、人族の手に残った。2万もの大軍を打ち破った勇名とともに。しかし。

「アル様・・・後のことはしばらくお任せしなければなりません・・・。」

 うちの一行は、かなりボロボロ。ホルゴス戦役が終わって、ちょっと行って来るのつもりが国お輿である。コルンさんの疲労困憊がひどい。しばらく北方領でこのまま休むことになった・・・それって休めるの?って俺が思ったのは内緒だ。ここでコキ使われるだけじゃ?

 加えてキーシルドさんも北方領、北の平原の民衆の力になるとのことで、またしばしの別れとなった。なんと、セウルギンさんも、そのお手伝いと北方領の監視で残るとか。時々は『転移』魔術で連絡に来るって言ってくれてるけど。この人も謎が多いな・・・。

 これで、勇者の一行の年長組3人がここに残留・・・ま、拠点づくりにはもってこいの場所ではある。将来性もあるし。

 で、年少組?こと俺たちは、一度、族長連合の現主都に戻ることとなった。

 勇者様と六大精霊との会談は、一年に一日だけ満月になる日、聖月の輝週、7の日に主都で行うのが最適、と決まった。今年の転生の儀式を見るためもある。もうすぐだ。

 正直、俺は気が進まない。あの一族の連中に会いたくもないし、誰かが新たに転生させられるのなんて見たくもない。それでも、勇者様が行くところに俺が行かない訳にはいくまい。俺は勇者様のために生きているのだから。


 あの日。勝利のあと、俺たちは城壁の上で宴会をやって、俺はアルと約束を果たした。

 碧晶の護り・・・こいつのおかげで助かったって。アルはうれしそうに受け取った。

「この宝玉の碧色・・・お前の瞳と同じ色だな。」

 って言ったら、急に顔を真っ赤にしてブツブツ言い出した・・・なんだそれ?で、俺は数日間、また近侍としてアルの仕事の手伝いやら警護やらに振り回された。

 そして、俺たちがザラウツェンを離れることが決まり、俺はアルにそのことを告げに言った。ヤツは・・・覚悟していたはずだったのに・・・泣きやがった。

「ち・・・北の盟主様ともあろうお方が、下っ端の従者相手にグズルなよ。」

 相変わらず、いつもの口調で俺が言ったけど。

「・・・バカ・・・じゃあ、約束して!キミが再びここにきて、その時シスコンもブラコンも治ってたら」

「なんだよ、人を病人みたいに。」

「いいから!だから、ボクを妹や弟の代わりじゃないって、そんな風に見られるようになってたら・・・」

 アルはそう言って急に俺に抱きついて、唇を俺に押しつけた。柔らかい感触と甘い痺れが後頭部にジ~ンっと広がって、それが全身に伝わって。俺はその間、まったく動けなかった。

「その時は、ボクのこと、スキになって!」

 そう言ってアルは、走り去っていった。それきりアルは、旅立つまで俺に会わなかった。

 

 去っていったのに。

 「おい・・・お前、何でここにいるんだ!?」

 出発の日、アルは、ちゃっかり俺たちの一行に紛れ込んでいた。でも、その顔は赤い・・・「あれ」以来だからな。正直、俺も、まともに顔をあわせづらい。

「いいじゃないか。コルン師がこっちより、見聞を広めて、そして、族長連合との国交をちゃんと作って来いって、許してくれたんだ。」

 それで盟主様を放り出すか?あのワーカホリック陣法師!過労死するぞ。

「まあ、いいじゃねえか。せっかく姉妹の契りを結んだばっかだしよお。」

「さすが、ソディ姉様!心が広い!」

 いや、そいつ、考えてないだけだから。

「うむ。確かに自立するとは言え、隣国で旧本国との関係づくりは重要だ。」

「その通りです、シル姉様!ボクもそう思ってるんです。」

 それ、コルンさんの受け売り・・・。

 で、勇者様は、アルの頭をなでなでし始めた・・・ち。

「エン姉様・・・うれしい。ボク、姉様方の妹にふさわしくなるよう頑張るよ!」

 ・・・懐柔されてるし。勇者様。

 なんか肩身が狭い。女子率高すぎっていうか、周りはみんな女子ばかり。女の中に男一人は、実は生きていくのがツライ、四面楚歌ってやつだ。ハーレム?そんなの見たことないね。

 そんな俺と違って、勇者様のユニコーンは妙にウキウキしている。一歩一歩がまるでステップ踏んでるようだ。こいつはこういう生き物だ。別にうらやましくはないけど。

「・・・パシリ、大丈夫。あたしはパシリの味方だから、ね。」

 どうだろ、うれしいけど、なんか微妙・・・。

「キミ、またその女とくっついて!」

 くっついてなんかないし、文句言われる筋合いじゃない!

 途方に暮れてる俺を乗せたジェーンは、すっかり元気になって、俺を慰めるよういなないた。ありがとうよ。俺はジェーンの首を軽く撫でる・・・仲間はお前だけか。

 そんな中、見送りに来てくれたコルンさんが言った。

「ここら辺の地力はまだ低いけど、蕎麦ならできるんじゃないかしら。」

って、ホント、仕事から離れられないな・・・休む気あるの?でも、さらに困ったこの人が。

「な・・・なるほど。パルシウスくん、キミはその広い蕎麦畑の中心でこう叫ぶのですね・・・『四面蕎麦』、と。」

「・・・そんなだいそれた野望はセウルギンさんにお譲りしますよ。」

 どうも調子が戻るのも、この辺で終わってほしい。この人、ここに何しに残るんだろう?

「まぁ、これでも拙僧らはノビノビやってますよ。それぞれ勤めもある身ですが。」

 ノビノビ過ぎませんか、大人の皆さん。何か中間の護姫様や俺が一番ワリ喰ってるような・・・。

「細かいな、キミは。ボクは旅は初めてなんだ。ちゃんと守ってくれよ。」

 こいつは浮かれてるし・・・身分的に一番エラいのが最年少って、やっぱ問題ねえか?

「嘘つけ。どうせキミはそんなコト気にしてないくせに。」

 まぁ、そうだな。お前は俺の妹みたいなもんだ。盟主?知らねえよ、特に旅してるうちは。


 ふと目をやると勇者様の顔が少し暗い。

 何ですか、勇者様?クッキーお替りですか?

 ポカって・・・元気ない。どうしたんだろ?

「ひょっとして、主都に戻りたくないんですか?」

 びくってなる勇者様。なんでわかるのって不思議そうに首をかしげる。その仕草がかわいい。

「実は、俺も主都なんか行きたくないからです。」

 胸を張って答える。俺のは個人的な理由だけど。つい、お互い顔を見合わせて笑う。

「でも、勇者様が行かれるなら、喜んでお供します。」

 それに・・・。

「もしもイヤだから、他の所に行きたいって言っても、ちゃんとついて行きますよ。」

 むしろ、そうしてほしいくらい。

 勇者様は困った顔で俺を見る。誘惑するなってか。残念。

「勇者様。ご安心ください。なにがあっても、どこに行っても、俺がお守りします。どこまでも一緒です・・・俺は勇者様の従者ですから。」

 そう。あなたと一緒なら、どんな困難でも、俺にはご褒美だから。

 勇者様は、馬上で並ぶ俺の左頬にキスしてくれた。そして、恥ずかしそうに微笑んだんだ。

 どっかで「あ~!」とか「キミはぁ!」とか「青春ね。」とか聞こえたのは知らない。


 第2部 完


第2部完結しました。お読みいただきありがとうございました。

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