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二人の射手にインタビュー

 新しく仲間になったのは、二人の射手だった。

 一人は、射手……? という見た目なんだけど。


「ホオジロ。クラスは射手」


 まず名乗ったのは、鋭い目つきをした女の人だった。

 軽装の鎧を身に着けていて、手にした弓は使い込まれているみたいだった。

 青みがかった髪を結い上げていて、うなじが剥き出しになっている。

 シュモックがニヤニヤしている。

 ホオジロは彼を見て、不機嫌そうに眉を(ひそ)めた。


「シュモック。何、あの大声出しながら胸とか足とか叩いて、馬鹿みたい」


「だが、一瞬気になっちまっただろう? その隙を衝いて、こいつがお前らを転向させたってわけだ」


 シュモックが、僕の頭をガシガシと撫でた。


「まだガキだが、俺たちのリーダーはちょっと見どころがあるぞ。ついていくに値する」


「ふぅん」


 ホオジロが目を細めた。


「あのー」


 恐る恐る、という感じで声を上げたのは、残る一人の射手。

 下手っぴの方だ。

 真っ赤な髪をした男の人で、鎧は革鎧なんだけど、ホオジロよりも動きやすそうな格好だ。

 目つきがちょっとタレ目で、いつも笑っているような顔をしていた。


「俺っちは、アカマグ。射手……と行きてえが、そいつは本職じゃねえんだ」


「ほおん。確かにお前さん、射撃はてんでダメだったもんなあ」


「うっへっへ」


 愛想笑いをするアカマグの手には、小さな弓が握られている。

 これじゃあ、全然射程が短いだろう。

 囮になっていたシジミちゃんに届かないはずだ。


「うわー。ニヤニヤした男の人。ウニさん、ちょっとこの人あぶなそう!」


「なにぃ!? 俺っちはがきんちょなんかに興味はないぞ!!」


「がきんちょ!? 私だって、あとちょっとで成人するんですからねーだ!!」


「何年で成人すんの?」


「さっ……三年……」


「がきんちょじゃねえの」


「キィーッ!!」


 シジミちゃんが悔しそうに地団駄を踏んだ。

 僕は、どうどう、と彼女を(なだ)める。


「それで、アカマグ。君のクラスは?」


「俺っちはね、クラスが斥候なんでさ。俺っちが確認に成功した範囲は、姉さんが射撃可能な空間になるんでさあ。もちろん、同じようにウニの旦那の転向魔法も射程が伸びますぜ」


「へえ、便利! ……でも、なんでアカマグは櫓にいたのさ」


「いやあ……人員不足っつーか、他の射手と姉さんが喧嘩しちまってなあ。俺っちしか相方として受け入れてくれないし、まあ前のご主人はウニの旦那を舐めてるからね。偵察なんざ必要ねーって」


「他の射手が下手くそ過ぎ。一緒にいたら足を引っ張られる」


「ンもうー! だからダメなんですよ姉さーん! 協調性協調性!」


「周りがわたしに合わせればいい。わたしは合わせるの嫌」


「姉さーん!!」


 また賑やかになったなあ。

 で、一人だけ、普段は誰よりも騒がしいのに静かな人がいる。

 誰あろう、うちの神様、エービーだ。

 じっと僕たちのやり取りを、無言で眺めている。


「ふ……ふふふふふ」


「あ、ようやくエービーが喋った」


「ふはははは! わーっはっはっはっは!」


「なんだなんだ!」


 みんな驚いて、エービーに注目した。


「ついに、ついに信者が復活してから最大の! 五人になったのじゃー!!」


「五人……」


 何とも言えない顔になる僕たち。

 だけど、エービーは実に得意げだ。


「なあに。良いか? 信者が増えるということは、そのままわしの軍勢の戦力が上がるということじゃ!!」


「今軍勢って言ったね?」


「わしの信者の戦力が上がるということじゃ! つまり、勝利に近づく!」


 しれっと言い直したな。


「マーダイめに勝利してしまえば、奴に従っていた戦力で、無事だったものはわしが総取りになるのじゃ!!」


「えっ、そうだったの!?」


 僕は目を丸くした。

 シュモックとホオジロとアカマグを見ると、三人とも当然のような顔をして頷いた。

 ちなみにシジミちゃんは、僕と同じ全くの素人なので、二人並んで驚くばかり。


「エービーが神様みたいになっちゃう」


「ばかもーん! わしはもともと神様じゃー!! ……とと、そんな事をしている場合ではないわい! よし、みんな撤退じゃ! 櫓が奪われたことに気づいて、マーダイの信者が攻めてくるぞ!」


「ええっ!? でも、せっかく転向させた櫓をまた取られちゃうよ!?」


 だけど、僕の心配は杞憂だったみたいだ。

 アカマグが僕の肩をぽん、と叩くと、ウィンクして見せた。


「安心しなってウニの旦那。俺っちが偵察で射界を確保したら、姉さん遠距離からでも他の下手くそどもを撃ち抜いちまうからよ!」


「うん。簡単に仕留められる」


 ホオジロも無表情でそれを肯定した。


「それによ。偵察の専門家である俺っち、遠間から攻撃できる姉さんが加わったことで、エービー様の勢力が取れる戦術は広がってるはずだ。なあシュモック」


「そうだな。いざとなれば俺は壁もやれるし、狭い空間なら俺の出番だ。遠くはホオジロ、敵を調べるならアカマグ。隙はないぜ」


 そうか!

 それぞれ、違う種類のクラスが三つ揃ったんだ。

 これでやれることの幅が大きく増えたんだな。

 それじゃあ、これからどうやって攻めるかを考えていかないとだ。


「ウニさん! 私は? 私は?」


 クラスがメイドであるシジミちゃんが、褒めてほしそうにしている。

 僕はちょっと考え込んだ。


「シジミちゃんは、新しく加わった二人にとびきりの賄いを作ってあげて! ご飯は大事だからね!」


「はーい!」


 そんなわけで、僕たちは早急にそこから撤退した。

 そして、ここから反撃が始まるのだ。

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